湊川神社

湊川神社：楠木正成を祀る、近代神社史に輝く聖地

湊川神社は、兵庫県神戸市中央区多聞通に鎮座する神社です。祭神は楠木正成公で、地元では親しみを込めて「楠公さん」と呼ばれています。建武中興十五社の一社であり、旧社格は別格官幣社、現在は神社本庁の別表神社に属しています。

湊川神社の創建：明治維新と楠木正成の顕彰

湊川神社の起源は、延元元年（1336年）5月25日、湊川の戦いで楠木正成が殉節した地に遡ります。その後、寛永20年（1643年）に青山幸利が供養塔を建立、元禄5年（1692年）には徳川光圀が「嗚呼忠臣楠子之墓」と刻まれた石碑を建立するなど、徐々に正成の霊を祀る動きが盛んになります。

幕末、尊皇攘夷の志士たちは楠木正成を理想の勤皇の象徴として崇敬しました。明治維新後、正成の忠義を後世に伝えるため、政府が主導して神社創建が決定。明治2年、墓所と殉節地を含む広大な敷地を境内地とし、明治5年5月24日、湊川神社が創建されました。薩摩藩、尾張藩、水戸藩など複数の藩が創建に関与しようとしたものの、最終的には国家事業として政府が主導権を握り、創建された点が特徴です。

境内と施設：歴史と文化が息づく空間

湊川神社境内には、楠公ゆかりの品々を収蔵する宝物殿、能楽堂である神能殿、結婚式場としての楠公会館などがあります。また、兵庫県内の神社の事務を管轄する兵庫県神社庁の事務所も併設されており、多様な機能を有しています。

祭神：楠木正成公とその一族、ゆかりの人々

主祭神は贈正一位楠木正成公です。配祀神として、楠木正成公の子息である楠木正行卿、弟である楠木正季卿、そして湊川の戦いで共に殉節した菊池武吉命ら16柱が祀られています。正成公の夫人である滋子刀自命を祀る摂社甘南備神社も本殿に合祀されています。

湊川神社の社名と社格

社名の候補として「大楠霊神社」、「南木神社」、「湊川神社」の3案がありましたが、最終的に地名に由来する「湊川神社」が採用されました。社格は、国家に功績のあった人物を祀る神社として、新たに設けられた別格官幣社に列せられました。

楠木正成の英雄化と湊川神社創建への道

徳川光圀による墓碑建立は、湊川神社創建の直接的な起源と言えます。光圀は『大日本史』編纂を通して南朝正統論を唱え、楠木正成を理想的な忠臣として顕彰しました。会沢正志斎の『新論』や真木保臣の『経緯愚説』などの尊皇思想が、維新志士たちの楠木正成崇拝をさらに深め、国家による祭祀を求める動きを加速させました。薩摩藩、尾張藩、水戸藩など複数の藩が楠木正成を祀る神社創建を建白しましたが、政府は国家事業として自ら主導権を握り、湊川神社の創建に至りました。

湊川神社創建の影響と歴史的意義

湊川神社は、政府が創建した人物顕彰神社の先駆けとなりました。それまでの神社は自然神を祀るのが一般的でしたが、湊川神社は、国家の英雄を顕彰する新しいタイプの神社として、近代神社史に大きな影響を与えました。また、墓を境内に含むことも特徴で、死者の祭祀への神道の関わりを示す重要な事例です。「七生報国」というスローガンにも繋がる楠木正成の忠義は、国民の模範として、特に戦時中に大きな影響を与えました。

湊川神社の戦災と復興

太平洋戦争中の神戸大空襲で社殿の大部分を焼失しましたが、戦後復興を果たし、現在に至っています。

湊川神社の主な行事

湊川神社では、歳旦祭、元始祭、節分祭、紀元祭、祈年祭、楠公祭、夏越大祓、例大祭、伊勢神宮神嘗祭当日祭遥拝、明治祭、新嘗祭、天長祭、大祓など、様々な祭事が執り行われています。特に、5月24日～26日に行われる楠公祭は、湊川神社の例祭として毎年盛大に執り行われています。

湊川神社へのアクセス

JR神戸線「神戸駅」、神戸高速線「高速神戸駅」、神戸市営地下鉄海岸線「ハーバーランド駅」、神戸市営地下鉄山手線「大倉山駅」から徒歩圏内に位置しています。ただし、駐車場はございません。

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