角山栄

角山栄（つのやま さかえ、1921年11月7日-2014年10月15日）は、日本の経済史研究に大きな足跡を残した学者です。専門はイギリス近代経済史であり、その深い知識と鋭い洞察力は、日本の経済史研究に新たな視点をもたらしました。

角山氏は大阪府大阪市に生まれ、堺市で幼少期を過ごしました。旧制市岡中学校、旧制大阪高等学校を経て、1945年に京都帝国大学経済学部を卒業。その後、和歌山大学経済学部助教授、教授を歴任し、1961年には「イギリス毛織物工業史論」で京都大学より経済学博士号を取得しました。和歌山大学では学部長、そして1975年には学長を務めるなど、大学運営にも大きく貢献しました。1986年に和歌山大学を定年退官後も、奈良産業大学教授などを経て、1993年から2008年まで堺市博物館館長として活躍しました。

学術面での貢献は計り知れません。数多くの著書を発表し、それらは日本の経済史研究に多大な影響を与えました。代表的な著書として、『イギリス絶対主義の構造』、『産業革命の群像 現代社会の原点をさぐる』、『茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会』、『時計の社会史』などがあります。これらの著作は、綿密な調査に基づいた緻密な分析と、分かりやすい解説で高く評価され、一般読者にも広く親しまれました。

また、角山氏は、大塚久雄の歴史学（大塚史学）に対する批判者としても知られていました。大塚史学に対する独自の視点と、それを裏付ける論拠を示すことで、歴史学研究に活気と深みをもたらしました。

角山氏の功績は学術研究にとどまりません。和歌山大学学長、堺市博物館館長としての経験を通して、教育、文化振興にも大きく貢献しました。教育者として多くの学生を育成し、博物館館長として市民に歴史や文化への理解を深める機会を提供しました。

数々の受賞歴も氏の業績を物語っています。1992年には平和堂貿易より時の功労賞を、1997年には勲二等瑞宝章を受勲しました。2014年、92歳で逝去。叙正四位。

角山栄氏の研究は、単に過去の出来事を記述するだけでなく、現代社会の問題を考える上で重要な示唆を与えてくれます。彼の著作は、現在も多くの研究者や学生に読み継がれ、日本の経済史研究の礎となっています。その功績は、長く人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。

主な著書一覧:

『文芸復興より啓蒙思想え 近世西洋文化史』
『資本主義の成立過程』
『イギリス絶対主義の構造』
『イギリス毛織物工業史論 初期資本主義の構造』
『産業革命の群像 現代社会の原点をさぐる』
『茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会』
『時計の社会史』
『辛さの文化 甘さの文化』
『「通商国家」日本の情報戦略 領事報告をよむ』
『シンデレラの時計 人びとの暮らしと時間』
『アジアルネサンス 勃興する新・都市型文明』
『時間革命』
『堺 海の都市文明』
『「生活史」の発見 フィールドワークで見る世界』
『茶ともてなしの文化』
『新しい歴史像を探し求めて』

また、多くの共編著や翻訳書も手がけています。角山氏の多岐にわたる活動は、日本の経済史研究、そして日本の文化の発展に大きな貢献をしました。

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