角田美穂子

角田 美穂子

角田美穂子（すみだ みほこ）は、日本の法学者として、特に民法と消費者法の分野で顕著な功績を上げています。一橋大学大学院法学研究科で教授を務め、その研究と教育活動を通じて、現代社会における法制度の発展に貢献しています。法学博士の学位を持ち、学術界のみならず、様々な公的機関での活動を通じ、実務的な課題解決にも深く関与しています。特に消費者法分野での貢献は大きく、津谷裕貴消費者法学術実践賞学術賞を受賞するなど、その研究成果は高く評価されています。

経歴

角田氏は、法学者の家庭に育ちました。父は著名な労働法学者で、後に第24代中央大学学長を務めた角田邦重氏です。角田氏自身は、1993年に一橋大学法学部を卒業後、同大学大学院法学研究科に進み、1998年に博士後期課程を修了し、法学博士の学位を取得しました。大学院在籍中から日本学術振興会特別研究員として研究に励みました。

研究者としてのキャリアは、亜細亜大学法学部での助教授職から始まりました。その後、横浜国立大学法科大学院の准教授を経て、2009年には母校である一橋大学大学院法学研究科の准教授として着任します。この間、法務省民事局参事官室の調査員としての経験も経て、実務にも触れています。2013年には、同研究科の教授に昇任し、現在に至ります。また、2019年には、厚生労働省の中央労働委員会公益委員を務めるなど、その活躍の場をさらに広げています。

公的活動

学術研究に加え、角田氏は多岐にわたる公的な委員会の委員として、政策形成や紛争解決の現場にも深く関与しています。消費者法、民法の専門家として、その知見は社会の様々な場面で活かされています。主な活動には以下のようなものがあります。

内閣府消費者委員会における消費者契約法に関する調査作業チームメンバーとして、法改正の議論に貢献しました。
経済産業省の産業構造審議会商務流通情報分科会では、IT利活用ビジネスに関するルール整備ワーキンググループの委員を務め、デジタル化時代の新たな法的課題に対応しました。
財務省関税等不服審査会委員として、専門知識を活かしました。
国民生活センター紛争解決委員会委員、消費者庁国民生活審議会消費者契約法評価検討委員会委員として、消費者の権利保護や紛争解決の仕組みづくりに尽力しています。
日本学術振興会での審査委員や、東京都消費者被害救済委員会の委員なども務め、その専門知識を社会に還元しています。

これらの活動は、角田氏の研究が理論的な探求に留まらず、社会的な課題の解決に直接的に貢献していることを示しています。

研究と業績

角田氏の研究の中心は、民法と消費者法、特に現代社会における複雑な契約関係や消費者保護に関連する分野です。その研究成果は多くの著書や論文として発表されており、学界内外で高く評価されています。

中でも、2014年に商事法務から刊行された著書『適合性原則と私法理論の交錯』は、投資家保護における重要な概念である適合性原則について、ドイツ法を参照しながら深く考察したものであり、この業績により2016年に津谷裕貴消費者法学術実践賞学術賞を受賞しました。この受賞は、消費者法学における角田氏の研究が学術的に極めて高い水準にあることを示しています。

現代社会の多様な契約関係、特に消費者契約や金融取引における法的課題に対する深い洞察に基づいた研究は、法の解釈・適用のみならず、将来的な法改正の議論にも大きな影響を与えています。

主な著書

角田氏は多くの共著や編著にも携わっており、その知見を広く共有しています。主な著書は以下の通りです。

『プログラム民法』（小林一俊,片桐善衛共編著,共著）酒井書店, 2002年
『企業法務判例ケーススタディ300 企業取引・知的財産権編』（山野目章夫,廣渡鉄監修,共著）きんざい, 2007年
『ブリッジブック先端民法入門 [第3版]』（山野目章夫編著,共著）信山社, 2009年
"Business Law in Japan"（共著）Wolters Kluwer Law & Business, 2011年
『ヨーロッパ消費者法・広告規制法の動向と日本法』（中田邦博,鹿野菜穂子共編,共著）日本評論社, 2011年
『松本恒雄先生還暦記念 民事法の現代的課題』（滝沢昌彦,小野秀誠,小粥太郎と共編著）商事法務, 2012年
『共通欧州売買法（草案）』（内田貴,石川博康,石田京子,大澤彩と共編著）商事法務, 2012年
『不動産賃貸借の課題と展望』（山野目章夫,松尾弘共編,共著）商事法務, 2012年
『消費者契約法改正への論点整理』（共著）信山社, 2013年
『適合性原則と私法理論の交錯』商事法務, 2014年
『ロボットと生きる社会―法はAIとどう付き合う?』（工藤俊亮と共編著）弘文堂, 2018年

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