角結膜炎

角結膜炎（かっけつまくえん、Keratoconjunctivitis）は、眼球の最も表面に位置する透明な角膜と、眼球の白目部分や瞼の裏側を覆う結膜の両方に炎症が生じる状態を指す医学的な総称です。もし炎症が結膜のみに限定して発生している場合は「結膜炎」と呼ばれ、角膜のみに炎症が生じている場合は「角膜炎」と呼ばれます。このように、角結膜炎はこれら二つの重要な眼の構造にわたる炎症を包括的に表現する用語として用いられます。

この眼病は、炎症を引き起こす原因によって多岐にわたる病型に分類されます。それぞれの病型は、特定の病原体、環境要因、または全身性の疾患に関連しており、特徴的な症状や経過を示します。

主な角結膜炎の種類としては、以下のようなものが医学的に知られています。

流行性角結膜炎: ウイルス、特にアデノウイルスへの感染が原因で発生する急性の結膜炎です。「はやり目」という通称でも広く認知されており、その名の通り非常に強い感染力を持つことが最大の特徴です。集団感染を引き起こすこともあります。
乾性角結膜炎: 炎症の結果、眼の表面が著しく乾燥した状態を指します。特に、リウマチ性関節炎を始めとする自己免疫疾患を患う患者さんの約20%に関連して見られることが報告されています。「ドライアイ」という言葉は、医療文献においてもこのような眼の乾燥状態を指す際にも用いられることがあります。
春季結膜炎: 特定の季節、特に春に悪化しやすい乾燥を伴う結膜炎で、一般的には花粉などの環境アレルゲンに対するアレルギー反応が主な原因であると考えられています。
アトピー性角結膜炎: アトピー性皮膚炎や気管支喘息といったアトピー体質を持つ人に発症しやすい病型です。アトピー体質の一つの眼科的な症状として現れることがあります。
上辺緑角結膜炎: このタイプの角結膜炎は、物理的な刺激や慢性的な外傷が原因となって発症する可能性が示唆されています。瞼の動きなどによる機械的な刺激が関与すると考えられています。
光電子角結膜炎: 強い紫外線に眼の表面、特に角膜が直接的または反射的に曝露されることによって引き起こされる病態です。保護眼鏡を着用せずに溶接作業を行った際に発生する「溶接眼炎」や、雪面からの強い反射光によって生じる「雪目」が代表的な例です。紫外線によって角膜の最も表面にある上皮細胞が損傷を受けます。このタイプの炎症による症状（強い痛み、充血、涙、光過敏など）は、紫外線曝露から通常6〜12時間経過した後に現れることが多いです。多くの場合、十分な休息を取り眼への刺激を避けることで、24〜48時間のうちに症状は和らぎ回復に向かいます。適切な紫外線対策、特に作業時や強い反射光がある場所での保護具の使用によって、この病態は効果的に予防することが可能です。

なお、ヒト以外の動物にも角結膜炎は発生します。例えば、牛においてはモラクセラ属の細菌が原因となる牛伝染性角結膜炎が畜産業において問題となることがあります。また、羊や山羊においては、クラミジア属の細菌が原因となって発生する急性のカタル性結膜炎が獣医学領域で知られています。

このように、角結膜炎は原因や病態が多様であるため、正確な診断と原因に応じた適切な治療が非常に重要となります。特に感染性の病型の場合は、他者への感染拡大を防ぐための注意が必要不可欠です。自身の眼の健康状態に異変を感じた際には、速やかに眼科医の診察を受けることが推奨されます。

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