觔斗雲

觔斗雲（きんとうん）

觔斗雲は、中国の古典伝奇小説『西遊記』に登場する特異な雲で、主人公である猿の仙人・孫悟空が空を飛ぶために利用する架空の術です。この雲は、一般には「筋斗雲」または「斤斗雲」とも表記され、これらの異体字は同じ意味を持ちます。また、「金斗雲」という当て字も見られることがありますが、いずれも同じconceptを指します。

「觔斗」という言葉には、「宙返り」という意義が含まれています。孫悟空がこの雲に乗る術を師である須菩提から授けられた際、彼は宙返りをしながら飛び立つ姿を見せました。この様子を見た須菩提は、孫悟空の技を称賛し、新たな術名を与えたとされています。興味深いことに、觔斗雲を使えば、一度の宙返りで10万8000里（約39,000km）という驚異的な距離を飛ぶことが可能です。

中国の伝統劇である京劇においては、孫悟空が雲に乗って舞う際に、この宙返りのシーンは非常に印象的な演出の一つとされています。このため、觔斗雲は単なる移動手段にとどまらず、演技や物語の展開においても重要な役割を果たします。

ただし、觔斗雲に乗るためには特別な条件があり、通常の人間や高僧であっても、その特性を満たさなければ使用することができません。例えば、光栄な徳を積んだ三蔵法師でさえ、触れることができないほどです。そのため、同じ物語の中で、猪八戒や沙悟浄といった他のキャラクターも雲に乗ることができるものの、觔斗雲の距離を短時間で飛ぶことはできず、数日を要する場合が多いです。

日本のテレビドラマ『西遊記』では、猪八戒が雲に乗る場面が描かれています。しかし、ドラマではしばしば整備不良や技術的な問題によって、高度が不安定になり、墜落してしまう様子も描かれています。これは、物語における滑稽な要素を際立たせる重要なシーンとなっています。

このように、觔斗雲は単なる移動手段にとどまらず、中国の文化や芸術、さらには現代のメディアにおいてもその重要性が語られる特異な存在です。孫悟空の物語を通じて、觔斗雲はその神秘性とともに、多くの人々を魅了し続けています。

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