解脱 (ジャイナ教)

ジャイナ教における解脱（モークシャ）

ジャイナ教の教義では、解脱（モークシャ）は魂の究極の状態を指し、業（カルマ）の呪縛や輪廻から完全に解放されることを意味します。この状態に達した魂は、無限の至福、知識、知覚を享受し、自らの純粋な本質に到達するとされています。解放された魂は「シッダ」（成就者）あるいは「パラマートマン」（最高の魂）と呼ばれ、魂が追求すべき最も崇高な目標であると考えられています。

ジャイナ教の教義によれば、解脱は「三宝」と呼ばれる理念に基づいて達成されます。この三宝は、正しい認識（サムヤク・ダルシャナ）、正しい知識（サムヤク・ジュニャーナ）、そして正しい行為（サムヤク・チャリトラ）から成り立ち、それは「解脱への道」（モークシャマールガ）とも称されます。

解脱の本質

解脱（モークシャ）は、主体的に行動する魂の存在を前提としており、全ての魂が物質的な世界に絡め取られ、業に束縛されて生と死を繰り返しているとされます。すべての魂はこの輪廻からの解放、すなわち解脱に至る道を辿ることができると信じられています。

経典における解脱の教え

ジャイナ経典『サマン・スッタム』に記されているように、解脱は「苦痛も快楽もなく、痛みも生もない存在である」と示されています。また、そこには感覚器官もなく、驚きや眠り、渇きや飢えも存在しません。この状態は「ニルヴァーナ」とも呼ばれ、完全な静寂と幸福を象徴します。

ウッタラディヤヤナ・スートラでは、ガウタマが解脱の意義を教える場面が描かれています。重要な点は、解脱に至るためには魂の個別性が残り、卒業者たちが存在することが強調されています。

解脱の可否

ジャイナ教は霊魂を二つのカテゴリー、すなわち解脱を信じ努力する「バーヴィヤ魂」と、解脱を信じず努力しない「アバーヴィヤ魂」に分けています。前者は解脱に至る可能性を持ちますが、努力を要します。

絶対的形態の個別性

ジャイナ教は、解脱後にも個別性が存続すると教えています。解脱を果たした魂であっても、互いに異なる存在として認識されます。シッダシーラは、解脱した者たちが暮らす場所であり、宇宙の頂に位置しているとされます。

人間としての生

解脱は人間としての生を通じてのみ達成できるとジャイナ教は教えています。神々や高次の存在も、人間と同様に転生し、同じ道を経て解脱に至る必要があると言われています。故に人間として生きることは非常に価値あるものであり、賢明な選択が求められます。

解脱への道しるべ

解脱への道は、まず「サムヤクトヴァ」（正しい状態）に至ることが求められます。これは、正しい認識・知識・行動の三つを身に付けることを指します。正しい認識は宇宙の実体の本質を理解すること、正しい知識は真理を知ること、正しい行為は魂の本来のあり方に従うことです。

完全智とニルヴァーナ

解脱に達した魂は「ケーヴァリン」となり、業の残余を焼き払うことで完全智（ケーヴァラ・ジュニャーナ）を得ます。これは生と死のサイクルから解放されるための高次の知識です。一方、ニルヴァーナはカルマの束縛からの最終的な解放を示します。

このように、解脱（モークシャ）とニルヴァーナは密接に関連しており、ともに魂が解放されるための重要な概念としてジャイナ教の中で位置づけられています。

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