計根別駅

北海道標津郡中標津町にかつて存在した計根別駅（けねべつえき）は、北海道旅客鉄道（JR北海道）が運営していた標津線の駅です。標津線の全線廃止に伴い、平成元年（1989年）4月30日をもってその歴史に幕を閉じました。電報略号は「ケネ」、事務管理コードは▲111703でした。

歴史

計根別駅の始まりは、昭和11年（1936年）10月29日です。この日、鉄道省計根別線の一部として、標茶駅から当駅までの区間が開業し、同時に一般駅として営業を開始しました。翌昭和12年（1937年）10月30日には、当駅から中標津、さらに根室標津まで路線が延伸。これにより、計根別線は従来の標津線（初代）を編入し、新たに標津線（2代）として再編成され、計根別駅はその路線上の重要な駅となりました。

長らく貨物や荷物の取り扱いも行っていましたが、国鉄の合理化の流れの中で、昭和55年（1980年）4月30日には貨物、昭和59年（1984年）2月1日には荷物の取り扱いがそれぞれ廃止されました。さらに昭和61年（1986年）11月1日には、列車交換設備の使用を停止し、駅の無人化が実施されます（出札業務は簡易委託化）。そして、昭和62年（1987年）4月1日の国鉄分割民営化により、北海道旅客鉄道（JR北海道）に引き継がれましたが、標津線自体の廃止計画は覆らず、開業から約53年後の平成元年（1989年）4月30日に、標津線の全線廃止とともに廃駅となりました。

駅名の由来

駅名は、所在地の地名である「計根別」に由来しています。この地名は、標津川の支流であるケネカ川を指すアイヌ語に由来すると考えられていますが、その具体的な語源については諸説が存在します。

アイヌ語研究者の山田秀三氏は、「ケネカペッ（kene-ka-pet）」、すなわち「ハンノキ・上手・川」という意味の言葉が地名となる際に「けねべつ」と略された、あるいはアイヌ語の段階ですでに「ケネペッ（kene-pet）」と略されていたものに漢字を当てたとする説を唱えています。昭和48年（1973年）に国鉄北海道総局が発行した『北海道 駅名の起源』でも、この「ケネペッ」説が採用されています。

駅構造

計根別駅は、その歴史の中で構造を変化させています。

貨物や荷物の取り扱いが行われていた時期は、国鉄によく見られる形式の駅で、2面3線のホームと線路を有し、列車交換が可能な構造でした。駅舎は線路の北側（標茶方面から見て右側）に位置し、ホーム間の移動は、標茶寄りの端部にある構内通路が線路を横切る形で行われていました。駅舎のすぐ横、東側（中標津寄り）には、切り欠き状の貨物ホームが設けられ、貨物列車の積降線が引き込まれていました。また、島式ホームの外側に敷かれた線路は主に貨物輸送に使用され、そこから中標津方向へ留置線が1本伸びていました。

貨物および荷物の取り扱いが廃止された後は、貨物用の線路が撤去され、2面2線の相対式ホームを持つ、依然として列車交換可能な駅となりました。

しかし、最終的な廃止時点では、構内は大きく縮小され、棒線化されていました。駅舎に面した単式ホーム1面1線のみが列車のために使用され、かつて島式ホームがあった構内南側は使用されずに放置されていました。ただし、どのような理由からか詳細は不明ですが、貨物ホームへの引き込み線はそのまま残されていました。

また、昭和11年（1936年）から昭和35年（1960年）頃まで、駅の貨物ホーム付近には、計根別の街を反時計回りに迂回し、中標津町の養老牛までを結んでいた殖民軌道養老牛線の停車場が設けられていました。ちなみに、標茶から計根別までの殖民軌道標茶線や、中標津駅逓から計根別までの殖民軌道計根別線は、標津線が建設されるまで存在し、その建設にも貢献しましたが、標津線が全線開通したことに伴い役割を終え廃止されています。

駅周辺

計根別駅の周辺には、地域の生活を支える様々な施設がありました。

中標津町役場 計根別支所
中標津警察署 計根別駐在所
計根別郵便局
北海道中標津農業高等学校
* 別海フライトパーク（旧陸軍計根別第一飛行場跡地を利用した民間のクラブ飛行場）

これらの施設に加え、阿寒バスの「計根別」停留所が近くにあり、地域の公共交通を担っています。

現状

計根別駅の跡地は、現在中標津町交流センターとして利用されています。かつて鉄道駅として賑わった場所は、地域の交流拠点へと姿を変えています。

その他

昭和59年（1984年）に公開された、渥美清主演の国民的映画『男はつらいよ』シリーズの第33作『夜霧にむせぶ寅次郎』では、当駅が物語の一部でロケ地として使用されました。

標津線廃止時の隣駅は、標茶方面が上春別駅、根室標津方面が開栄駅でした。

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