許世賢

許世賢（シュー・シーシェン、きょ・せけん、1908年4月1日 - 1983年6月30日）は、台湾の政治家であり、医師として知られています。彼女は台湾における女性の社会進出を牽引した人物であり、数々の「台湾初」を成し遂げました。具体的には、台湾で初めて博士号を取得した女性であり、台湾初の女性市長、女性市議会議員、そして女性高等学校長でもあります。また、日本で3人目の女性医師としてもその名が知られています。

生い立ちと教育

1908年4月1日、許世賢は台南庁（現在の台南市）で生まれました。父親の許煥章は清朝の学者でした。日本統治下の台湾で育った彼女は、幼い頃から植民地主義に抵抗する精神を持っていました。台南州立高等女学校（現在の国立台南女子高級中学）を卒業後、東京女子医科大学に進学しました。学生時代には、天皇誕生日を祝うことを拒否し、泉漳語を話す人々を擁護するなど、反骨精神を発揮しました。大学卒業後、台湾に戻り、台南州立台南病院に勤務しました。

結婚と医学研究

1933年、許世賢は嘉義市出身の張進通と結婚しました。夫婦で九州帝国大学（現在の九州大学）医学部に進学し、産婦人科学を専門としました。1939年、医学博士号を取得し、台湾人女性として初の博士号取得者となり、「鴛鴦医師」として知られるようになりました。また、この時点で日本人女性を含めても3人目の女性医師でした。1940年には、夫とともに嘉義市に病院を開業しました。

政治活動

1945年、許世賢は中国国民党に入党し、後に台湾省議会議員に選出されました。しかし、汚職問題をめぐり党から3回脱退しようとしました。1957年4月には無所属として台湾省議会議員に再選されました。1958年には、中国地方自治研究会に参加したことで国民党から正式に追放されました。議員としては、与党に対して厳しい質問を行うことで知られ、台湾出身の6人の州議会議員の一人として「五龍一鳳」と呼ばれました。1960年には、雷震と協力して中国民主党を設立しましたが、雷震はその後すぐに逮捕されました。1961年1月には党外運動に参加し、無所属候補者の選挙活動を調整しました。

嘉義市長としての活躍

1968年、許世賢は嘉義市長に選出され、台湾初の女性市長となりました。市長としての任期は1972年まででしたが、国民党は年齢制限を理由に許世賢の2期目の出馬を阻止しようとしました。そのため、彼女は立法院の議席を目指し、1972年12月の選挙で最多得票数を獲得しました。1981年に辞任し、年齢制限が解除されたため、再び嘉義市長選挙に挑戦しました。しかし、1983年6月30日、現職の嘉義市長として在任中に亡くなりました。

その後と遺産

許世賢の娘である張文英と張博雅も、後に嘉義市長を務めました。2014年には、許世賢を偲ぶ博物館が開館し、彼女の功績を称え、その生涯を後世に伝えています。彼女は、台湾の女性の地位向上と政治参加において、大きな足跡を残した人物として、今もなお多くの人々に尊敬されています。

許世賢は、台湾の歴史において、卓越した知性と強い意志を持って社会変革を牽引した女性リーダーとして、その名を深く刻んでいます。彼女の生涯は、困難に立ち向かい、自己の信念を貫くことの大切さを教えてくれます。

もう一度検索