試製対空戦車 タハ

試製対空戦車 タハ

試製対空戦車タハは、大日本帝国陸軍が第二次世界大戦中に設計した対空戦車ですが、実際には実用化されることはありませんでした。この車両の設計は昭和17年4月に開始され、一式中戦車をベースに、37mm高射機関砲を連装で装備する計画がありました。開発は一技研と四技研の共同で進められ、小倉造兵廠と富士電機により試作が行われましたが、試作車両として完成したものは存在しません。

設計背景

日本陸軍の装備として従来使用されていた20mm高射機関砲と75mm高射砲の間には射高のギャップがあり、これに対処するために新たに九四式三十七粍機関砲が開発されましたが、同機関砲は連射に難があり実用化には至りませんでした。

一方、陸軍は日中戦争で盤グッド記念製の37mm高射機関砲を鹵獲しました。これは後に日本軍が購入し、昭和12年9月には実験が行われて優秀と評価されました。昭和16年にはさらに10門と弾薬1万発を追加購入し、「ラ式三十七粍高射機関砲」と命名しました。昭和17年にはこの機関砲を基にした試製一式三十七粍高射機関砲が完成し、昭和18年3月にはその審査も終了し、正式に制式制定されたと考えられています。

需要の変化

日本が第二次世界大戦に突入した後、特にドーリットル隊による東京空襲の影響で、高射機関砲への要望が高まりました。昭和17年11月には研究方針の見直しが行われ、機甲部隊に適用するための自走式高射機関砲が求められるようになりました。特に、昭和19年6月の陸軍兵器行政本部からの指示により、装軌式車両への37mm機関砲の搭載が検討されました。

この自走式高射機関砲の設計は昭和17年に開始され、昭和19年2月には初回試験が行われる予定であったが、結局は完成には至りませんでした。

機関砲の技術的特性

試製一式三十七粍高射機関砲の技術的な仕様には、口径37mm、全長2432mm、砲身長2110mm（57口径）などが含まれます。ライフリングの長さは1814mmで、砲身内部には右回りのライフリング20条が施されています。発射速度は180発/分で、初速は920m/sに達します。また、射射界は-5度から95度の範囲があり、水平射程は約10,000m、垂直射程は3,800mと推定されています。

秘密の記録

昭和18年8月1日には、試製対空戦車タハに関する極秘な記録が残されており、このことからもその特異性が伺えます。そこには武装の諸元や装甲、性能に関する詳細な情報が記載されており、外形や機構に関しても厳重に管理されていたことがわかります。

昭和19年1月には、陸軍技術研究所による試験が予定されるものの、搭載する兵装の製造が思うように進まない事態に直面しました。特に、必要な材料が調達困難であったため、製造計画は次第に修正され、最終的にはほとんど完成しないままに終わることとなりました。

結論

試製対空戦車タハは、設計としては興味深いものでしたが、実際には技術面や資材供給の問題から実用化に至ることはありませんでした。日本陸軍の対空戦車開発の中での位置づけは、未完のままの試みとして今に伝わっています。

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