認識票

認識票（にんしきひょう）についての詳細

認識票とは、軍隊において兵士が着用し、戦死時にその身元を確認するための重要なアイテムです。これが存在しない場合、戦地で死亡した兵士の名前や所属を知る術が無く、埋葬される際にもそのまま放置されてしまう危険があります。アメリカ軍ではこの認識票を「ドッグタグ」と呼び、近年では「IDタグ」という新しい呼称も使用されるようになっています。

歴史的背景

前近代

古代の時代から兵士の身元確認は行われており、人相や入れ墨がその手段として用いられていました。最初に記録に残る認識票は、スパルタの兵士たちが左手首に名を書いた棒を結びつけていたという情報があります。またローマ軍はシグナキュラムと呼ばれる鉛の小板に個人情報を刻んで首から下げていました。

19世紀の提唱と普及

現在の認識票の原型は、19世紀のヨーロッパにおいて戦死者やその家族への配慮から生まれました。1859年の第二次イタリア独立戦争ではフランス軍が死者の身元を特定するためにこのアイテムを使用し、1861年の南北戦争ではアメリカ側で兵士が名札を自費で購入し付けていたという歴史があります。

1866年の普墺戦争でもプロイセン軍が金属の認識票を配布しましたが、当時の兵士の中にはそれを嫌って捨ててしまう者も多かったようです。1867年にはパリ国際会議が開かれ、戦場での死者の身元確認が重視され、認識票の重要性が再認識されることになります。

20世紀における定着

日本では日露戦争の際に金属板を使用した認識票が導入され、兵士には所属部隊や番号、将校には階級や氏名が刻印されました。第二次世界大戦では、イギリス軍やアメリカ軍、そして日本の陸軍でもそれぞれ異なる形状の認識票が使用され、戦死時の個人識別が確実に行えるように工夫されました。

認識票の形状と様式

認識票のサイズや素材、刻印される情報は国によって異なります。一般的に使用されるのは5cm程度の大きさを持つアルミニウム製やステンレス製で、氏名、生年月日、性別、血液型、所属軍や認識番号、宗教などの情報が刻印されます。特に戦死時に遺体が損壊しても認識票が無事であれば、個人を確認することが可能です。

使用される認識票は、2枚式や1枚式など複数の形式が存在し、2枚式の場合は一枚が戦死報告用として回収され、もう一枚が遺体に残されるという運用がされています。

現代の利用

近年では、認識票は軍人だけでなく、一般人の装身具としても利用されることがあります。軍用のものは通常、卑金属で作られていますが、ジュエリーとして使われるものは銀や金といった貴金属で製造されることも多いです。また、災害や事故の際に認識票を身につけていたために身元確認が容易に行えたケースも報告されています。

自衛隊の認識票

自衛隊でも認識票が存在し、構造は第二次世界大戦のアメリカ軍のものに似ていますが、使用される材料や刻印内容には違いがあります。たとえば、自衛隊の認識票には氏名や認識番号、血液型が英大文字で刻印され、通常は表裏ともにエンボス加工されています。また、戦場での使用を考慮し、兵士の口の中の歯を使って外すための切り込みも施されています。このように、認識票は歴史と共に発展し、軍隊における重要な存在となっています。

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