誠孝皇后

誠孝皇后（せいこうこうごう）

誠孝皇后は、明の洪熙帝の皇后であり、その生涯は明朝の歴史において重要な役割を果たしました。彼女は張氏という姓を持ち、帰徳府永城県の出身です。父は張麒、母は仝氏であり、彼女の出自は高貴ではありませんでしたが、その後の活躍は目覚ましいものがありました。

妃から皇太子妃へ

洪武28年（1395年）、彼女は燕王朱棣（後の永楽帝）の世子であった朱高熾（後の洪熙帝）に嫁ぎ、妃となりました。当時、朱高熾はまだ皇位継承者としての立場が確固たるものではなく、その地位は不安定でした。しかし、張氏は朱高熾を支え、献身的に尽くしました。永楽2年（1404年）には、彼女は皇太子妃に立てられ、その地位を確立しました。

皇太子妃としての張氏は、舅姑である永楽帝と皇后に孝養を尽くし、その評判を高めました。永楽帝は、皇太子である朱高熾をあまり快く思っていなかったものの、張氏のことは高く評価していたと伝えられています。永楽帝は朱高熾の廃太子も検討したことがありましたが、張氏の存在がその決定を思いとどまらせた一因とも言われています。

皇后、そして皇太后、太皇太后へ

洪熙帝が即位すると、張氏は皇后に立てられました。父の張麒には彭城伯の爵位が贈られ、その一族も栄誉を受けました。洪熙帝の在位は短期間で終わりましたが、皇后としての張氏は、その短い間にも朝廷の安定に貢献しました。彼女は夫を支え、国政においても重要な役割を果たしました。

洪熙帝が崩御すると、実子の宣徳帝が即位し、張氏は皇太后となりました。宣徳帝の治世においても、彼女は政治に関与し、朝廷に影響力を行使しました。宣徳帝の治世は明朝の黄金時代の一つとされ、その成功には張氏の助言も貢献したとされています。

宣徳10年（1435年）、宣徳帝が崩御し、10歳で英宗が即位すると、張氏は太皇太后となりました。彼女は慎み深い態度で朝政を聴き、必要に応じて適切な助言を与えました。太皇太后としての張氏は、幼い英宗を支え、明朝の安定に大きく貢献しました。

張氏は、その生涯を通じて、常に皇室を第一に考え、賢明な判断を下し続けました。彼女は賢后として歴史に名を残し、その功績は多くの人々に称えられました。正統7年（1442年）、張氏は崩御し、誠孝恭粛明徳弘仁順天啓聖昭皇后の諡が贈られました。

偉大な母、そして賢后

中国の諸王朝において、皇太子妃から太皇太后となり、しかもその血筋が後の皇室に繋がっているのは、張氏ただ一人です。彼女は、皇室の繁栄のために尽力し、その功績は比類なきものです。彼女の人生は、ただの皇族の女性としてではなく、賢明な政治家、そして偉大な母としての姿を示しています。

子女

朱瞻基（宣徳帝）
朱瞻墉（越靖王）
朱瞻墡（襄憲王）
嘉興公主

伝記資料

『明仁宗実録』
『明宣宗実録』
* 『恵安伯永城張昇墓志銘』（張昇は誠孝皇后の同母兄）

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