誤謬表

誤謬表についての概要

『誤謬表』（ごびゅうひょう、ラテン語: "Syllabus Errorum"）は、1864年の12月8日に教皇ピウス9世によって発表された重要な文書です。正式には『近代主義者の謬説表：ピオ9世の数多くの訓話、回勅、書簡による大勅書』と呼ばれています。この文書は、カトリック教会が近代社会に対してどのような立場を取るかを明確に示しています。

背景

ピウス9世がこの文書を発表した背景には、1848年の革命以降のカトリック教会及び教皇の権威が揺らいでいたことがあります。この時期は、自由主義や自然主義の影響が強まっており、それに対抗する形で教皇はカトリックの教義の絶対性を主張せざるを得ませんでした。特に、自由主義や市民革命が広まる中で、カトリック教会の立場を守ることが急務とされました。

回勅『クワンタ・クラ』と誤謬表

1864年12月8日、ピウス9世は回勅『クワンタ・クラ』（ラテン語で「注意深く」）を発表し、その中で自由主義や自然主義、さらには社会主義や共産主義を批判しました。また、この回勅に添付される形で、『誤謬表』が作成され、80の命題が誤謬として指摘されました。

誤謬表で誤謬として挙げられた内容には、以下のようなものが含まれています:

• - 汎神論や自然主義、合理主義哲学
• - 信教の自由や自由主義神学
• - 社会主義、共産主義、フリーメイソン、聖書協会
• - 教会への国家の介入や領邦教会の問題
• - 世俗法の教会法に対する優越
• - 非教会の学校の設置
• - 離婚に関する問題

特に注目されるのは、「教皇は進歩、自由主義、現代文明と和解し、妥協する事ができるし、またそうしなければならない」という命題が誤謬として挙げられたことです。これにより、カトリック教会は近代社会から完全に背を向ける姿勢を明確にしました。

社会的反響

誤謬表の発表は、カトリック教徒の間で大きな議論を呼び起こしました。特にフランスでは、誤謬表に関する説教が禁止されるなどの反応があり、信徒たちの間でも賛否が分かれました。この文書は、教皇の権威とカトリックの教義が揺るがされる中で、教会が保持しようとした絶対性を象徴するものでした。

誤謬表は、カトリック教会の近代への抵抗の象徴として、また同時に、宗教と政治、自由主義の問題に関する深刻な対立のポイントにもなり得る内容を含んでいます。

まとめ

『誤謬表』は、カトリック教会の教えにおける重要なマニフェストであり、近代思想に対する教会の公式な立場が記された文書です。教皇ピウス9世の発表は、教会の権威と伝統を強調するためのものであり、以降のカトリック教会の動きに大きな影響を与えました。

もう一度検索