諸樊

諸樊（しょはん）：春秋時代の呉の王

諸樊は、春秋時代の呉の第2代王であり、名は遏（または謁）と記されます。父は寿夢で、闔閭と夫概の父にあたります。

生涯

紀元前561年、父の寿夢の死後、王位を継承しました。在位中は、呉の勢力拡大に尽力しました。

紀元前548年秋、楚の属国である舒鳩が呉に背いたため、楚の令尹屈建が兵を率いて舒鳩を攻撃しました。諸樊は舒鳩を救援するために出陣しましたが、楚軍に大敗し、舒鳩も滅亡しました。同年12月、諸樊は楚の属国である巣に攻め込みましたが、巣の牛臣によって射殺されました。

諸樊の剣の発見

2019年2月、AFP通信は、中国河南省湯陰県にある羑河東周墓地1号墓から諸樊の剣が出土したと報じました。発見されたのは青銅製の剣で、全長42センチ、柄の長さは9センチです。鋳造で作られており、切っ先が一部欠損しているものの、保存状態は良好でした。

剣の脊は菱形をしており、両側に合計33文字の銘文が刻まれていました。その内容は、「工䱷（句呉）王長子の姑發冒反（諸樊の字と名）が自ら制作し、身に付けて使用した。この剣は、私（姑發冒反）のために作られた。この剣を使用する限り、私に逆らう者はいないだろう。この剣は、長江の北、そして西への旅路を守ってくれるだろう」という意味です。この剣は、2019年2月時点で現存する唯一の呉王諸樊の剣とされています。

考古学的な謎

しかし、この剣が発見された羑河東周墓地は、諸樊が生きていた時代には中原地域に該当し、呉の本拠地であった現在の江蘇省周辺から遠く離れています。なぜこのような場所で副葬品として発見されたのかは、未だに解明されていません。この事実は、当時の呉と中原地域との関係、あるいは埋葬された人物の出自について、新たな疑問を投げかけています。

諸樊の剣の発見は、春秋時代の呉の文化や技術を知る上で貴重な資料であると同時に、当時の国際関係や文化交流を考察する上で重要な意味を持っています。今後の研究によって、この剣が語る歴史がさらに明らかになることが期待されます。

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