講談社BOX新人賞

講談社BOX新人賞：革新的な新人賞の軌跡

講談社BOX新人賞は、講談社が2006年に創刊した文芸書レーベル「講談社BOX」が主催していた小説新人賞です。当初は小説だけでなく、イラストや批評・ノンフィクション作品も募集していました。従来の新人賞とは一線を画す、ユニークな選考方法と自由な作品スタイルが特徴でした。

賞の変遷

この賞は、レーベル創刊と同時に「講談社BOX新人賞“流水大賞”」としてスタートし、全7回実施されました。その後、2009年4月からは「講談社BOX新人賞“Powers”」と名称を変え、全18回開催されました。しかし、第18回“Powers”（2013年11月末日締切、2014年2月結果発表）をもって、惜しまれつつも廃止となりました。

賞の廃止後、講談社BOXの役割は講談社文芸シリーズ出版部主催のメフィスト賞に引き継がれ、講談社ノベルスおよび講談社BOX向けの作品が募集されることになりました。しかし、2015年に講談社タイガが創刊されて以降、講談社BOXからの新作刊行はほとんど見られなくなっています。

賞の特徴

講談社BOX新人賞の最大の特徴は、募集作品のジャンルに制限がなく、すべての応募作を編集者が直接読むという点でした。また、枚数制限がなかった（下限は400字詰め原稿用紙換算350枚）ことも、他の新人賞には見られない特徴でした。そのため、ミステリー作品が中心の他の講談社文芸図書第三出版部系の新人賞とは異なり、青春小説、ホラー、SFなど、多様なジャンルの作品が数多く応募されました。また、受賞者は少なかったものの、イラスト部門も存在していました。

また、講談社BOX編集部が発行していた電子雑誌『BOX-AiR』で行われていたBOX-AiR新人賞も、講談社BOX新人賞の廃止後も継続されましたが、こちらも2014年の第25回をもって終了しています。

受賞者とその後

「流水大賞」時代には、小柳粒男、泉和良、針谷卓史らが“危険な新人”として注目を集めました。また、天原聖海、黒乃翔、鏡征爾は“最強新人”と呼ばれ、2009年5月には3人のデビュー単行本が同時に刊行されるなど、華々しいデビューを飾りました。

“Powers”では、受賞が“Powers”、“Talents”、“Stones”の3つに分かれており、それぞれ書籍出版の機会や編集者との連携が異なっていました。しかし、2011年10月末日締切の第11回を最後に、“Talents”と“Stones”は廃止され、イラスト部門も同時に廃止されました。

2015年に講談社タイガが創刊された際、講談社BOXの作家陣は整理されましたが、ミステリー色の薄い賞であったため、京都大学推理小説研究会出身の円居挽と森川智喜を除き、多くの受賞作家は講談社を離れ、他社へと活躍の場を移しています。

下剋上ボックス

「あしたの賞」受賞者の中には、短編作品が『パンドラ』の「下剋上ボックス」コーナーに掲載される機会が与えられました。このコーナーは全3回掲載され、読者投票の結果、小仙波貴幸、円居挽、森川智喜の単行本デビューが決定しました。また、森野樹もこのコーナーへの参加を経て、講談社BOX新人賞“Powers”を受賞し、デビューを果たしています。

講談社BOX新人賞は、その革新的な試みと自由な作風で、多くの新しい才能を輩出してきました。現在はメフィスト賞に統合されましたが、その精神は今もなお、日本のエンターテインメント小説界に影響を与え続けています。

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