警官の血

警官の血

『警官の血』（けいかんのち、The Policeman's Lineage）は、佐々木譲によって執筆された日本の警察小説で、これを原作としたテレビドラマと韓国映画も制作されました。初めてこの作品が公にされたのは、2006年6月号の『小説新潮』で、2007年8月号までの連載が行われました。物語は、昭和と平成の未解決事件を背景に、三代にわたって警察官の人生を描いた大河小説です。2011年には、続編『警官の条件』が発表されています。

あらすじ

物語の主人公、安城和也は警視庁の刑事であり、祖父から続く警察官の家系の第三代目として育ちました。彼はある日、写真館で偶然祖父の過去を記録した古い映像を発見します。この映像には、天王寺・五重塔の火災の際の祖父、安城清二が映し出されていました。和也がその後、古びた缶から見つけた新聞の記事には、殉職した父、安城民雄の報道がありました。これに触発された和也は家族の歴史に思いを馳せます。

物語は1948年から始まり、警察官である祖父・清二が上野警察署に勤務していた頃の未解決事件に遡ります。男娼ミドリの扼殺体が発見されますが、捜査は進展しないまま4年が経過します。その後、若い国鉄職員の遺体が発見され、清二は再び捜査へと向かいます。やがて、清二はこの事件に警察が関与していたことを掴むも、捜査は行き詰ってしまいました。

続いて、昭和32年に配属先の駐在所で、五重塔の火災が発生します。その際に知人を見かけた清二は、追跡して姿を消し、後に国鉄の線路で遺体として発見され、自殺とされます。その事件から28年後、清二の息子である民雄も警察官として天王寺駐在所に配属されます。彼もまた父の未解決事件を追い続けますが、殉職してしまう運命にあります。

最終的には、和也が父・民雄の意志を引き継ぎ、過去の謎に挑む姿が描かれます。警務部の命により、他の捜査員の素行調査を担当することになった和也は、やがて父や祖父の過去に隠された真実に触れ、自身が抱える葛藤に向き合うことになります。

登場人物

物語には清二と妻、多津、その後の世代として民雄とその妻の順子、そして和也が登場します。清二は、憲法を尊重し市民のために尽くそうとした警察官であり、民雄は父の名誉を守るために警察官となった過程が描かれています。和也は、両親の事績を引き継ぎつつ、世代間の違いを感じながら成長していきます。

メディア展開

2007年にはテレビドラマが制作され、2009年に放送されました。視聴率も高く、多くの視聴者を魅了しました。2022年には舞台を韓国に移し、映画化もされています。

この作品は、一家の歴史と警察の闘志を通じて、人間模様や社会の矛盾を描き出しており、警察小説の枠を超えた深いテーマが展開されています。まずは小説を手に取って、ぜひその世界観を体感してみてください。

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