護送車

護送車とは

護送車とは、日本の警察が被疑者を警察署、地方検察庁、区検察庁、裁判所、拘置所などの施設へ移送するために使用する車両です。被疑者の逃走防止や安全な移送を目的として、特別な装備が施されています。

概要

護送車の外観は、多くの場合、市販車とほぼ同じです。ただし、屋根には警察車両であることを示す警光灯が装備されています。警光灯は、警察署を出発する際や、地方検察庁に出入りする際などに点灯され、護送中は消灯されるのが一般的です。

窓には、外から車内を覗き見られないようにスモークフィルムが貼られています。また、少年や女性が同乗する場合には、プライバシー保護のため、運転席側1〜2列目にカーテンが設置されていることがあります。被疑者の逃走を防ぐため、窓の内側には鉄格子が取り付けられていることもあります。各座席には手錠が常備されており、護送中は手錠とシートベルトが装着されます。運転席と後部座席の間は金網などで物理的に仕切られており、車両の扉の外側にはかんぬきが装備されています。

重大事件の被告人を護送する際には、大型車一台に一人だけを乗せ、複数の護送担当者が同行することもあります。

歴史

護送車の歴史は、1916年（大正5年）3月31日に警視庁で囚人護送馬車が自動車に置き換えられたことに始まります。これにより、より迅速かつ安全な被疑者の移送が可能になりました。

バリエーション

護送車には、様々な種類があります。

小型護送車:
ワンボックスカーやミニバンをベースにした車両です。日産キャラバンやトヨタハイエースなどが使用されています。覆面パトカー（捜査車両）として運用されることもあり、日産エルグランド、日産セレナ、スズキランディなどが採用されています。

中型護送車:
マイクロバスをベースにした車両で、助手席用のドアが装備されています。トヨタコースターや日産シビリアンなどが使用されています。

大型護送車:
9mクラスの中型バスをベースにした車両です。日野メルファやいすゞガーラミオなどが使用されています。小型・中型とは異なり、クリーム色地に青色のラインが入った専用の塗装が施されています。

関連項目

Justice Prisoner and Alien Transportation System（JPATS）:
アメリカ連邦保安官局の航空囚人輸送・不法滞在者輸送部門です。通称「Con Air」と呼ばれています。ボーイング737を複数機保有しており、航空機による囚人輸送を行っています。

パトロールカー:
警察官がパトロールなどに使用する車両です。護送車とは異なり、被疑者の護送を主な目的とはしていません。

人員輸送車・遊撃車:
主に機動隊が管理する、警備や警察官の輸送に使用される車両です。外側に金網があるため、漫画やドラマなどで護送車と混同されることがあります。

ブラック・マリア:
古いアメリカの俗語で、護送車（特に護送馬車）を指す言葉です。

唐丸籠:
江戸時代に使われていた罪人護送用の籠です。唐丸という鶏を飼う籠に似ていたことから、この名前で呼ばれていました。

護送車は、被疑者を安全かつ確実に移送するための重要な役割を担っています。その特殊な構造や装備は、警察活動の一端を垣間見ることができるものでしょう。

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