讀賣報知

讀賣報知：戦時下の新聞統合とその終焉

『讀賣報知』は、第二次世界大戦中の新聞統制という特殊な状況下で生まれた新聞です。当時の日本の新聞業界は、国家による統制が強化され、多くの新聞が統合や廃刊を余儀なくされました。その中で、『讀賣新聞』と『報知新聞』も例外ではなく、一時的に合併し、新たな新聞として発行されることになったのです。

成立の背景：新聞統制下の苦渋の決断

1942年（昭和17年）8月6日、読売新聞社（現：読売新聞東京本社）は、報知新聞社を新聞統制によって吸収合併しました。明治初期から長きにわたり読者に親しまれてきた『讀賣新聞』と『報知新聞』の題字は、『讀賣報知』へと改められ、読売新聞社が編集・発行の実務を担うことになりました。ただし、新聞の歴史を重んじ、紙齢は『讀賣新聞』の創刊年である1874年（明治7年）からのものが引き継がれました。

戦火の中での発行：困難を極めた新聞運営

しかし、戦況の悪化とともに、新聞の発行はますます困難を極めます。1945年（昭和20年）5月25日の第3次東京大空襲（山手大空襲）では、京橋区銀座西にあった読売新聞社本社が甚大な被害を受けました。そのような状況下で、『讀賣報知』は、奇跡的に被害を免れた朝日新聞東京本社の工場を借り、『共同新聞』として発行を継続するという苦肉の策を講じました。読売新聞社本社はその後、有楽町（現在の読売会館が建っている場所）にあった別館（旧報知新聞社本社）に移転し、朝日新聞への委託印刷も続けられました。

戦後の変遷：それぞれの新たな出発

終戦を迎え、1946年（昭和21年）5月1日、『讀賣報知』は3年8ヶ月ぶりに『讀賣新聞』へと題号を復しました。戦後の読売新聞は、東日本を対象としたブロック紙から全国紙へと発展を遂げ、平成初期には発行部数1,000万部を超える世界最大の新聞メディアへと成長しました。

一方、報知新聞も同じく1946年（昭和21年）に、旧法人の有志によって新法人が設立され、『新報知』として復刊を果たします。その後、1948年（昭和23年）には題号を『報知新聞』と改めましたが、経営が悪化したため読売新聞社の傘下に入り、読売系のスポーツ紙として再出発しました。現在の『スポーツ報知』は、東京と大阪で発行されており、その紙齢は1872年（明治5年）に創刊された『郵便報知新聞』からのものを引き継いでいます（ただし、『讀賣報知』に統合されていた期間は休刊扱い）。

現在への繋がり：それぞれの遺産

『讀賣報知』という新聞は、短期間しか存在しませんでしたが、その歴史は『讀賣新聞』と『スポーツ報知』という2つの新聞に受け継がれています。新聞統制という時代の波に翻弄されながらも、情報を伝え続けるという使命を果たそうとした人々の努力は、決して忘れられるべきではありません。

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読売会館 - かつて報知新聞社本社があった場所。現在は読売新聞社の別館となっている。
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