谷川真理

谷川真理（たにがわまり）

1962年 10月27日、福岡県福岡市に生まれた谷川真理は、女子陸上競技の長距離走・マラソン選手として一時代を築き、現在はタレント活動や流通経済大学客員教授を務めるなど、多方面で活躍しています。東京都荒川区在住。

異色の経歴と競技への転身

学生時代は東京の武蔵野中学校・高等学校で陸上部に所属し、800mを中心とした中距離選手でしたが、練習への苦手意識から南関東大会止まりでした。高校卒業後はツアーコンダクターを目指し専門学校へ進み、一時陸上から離れます。卒業後、イースタンリースに就職しOLとして働いていた24歳の時、皇居周辺を走る市民ランナーの姿を目にしたことから、再び走り始め、マラソンに挑戦する決意を固めます。ジョガー時代から中島進氏の指導を受け、市民マラソンでの優勝をきっかけに注目を集めました。

トップアスリートへの飛躍

1988年3月に名古屋国際女子マラソンでフルマラソンに初挑戦。その後、昭和情報機器（現在のキヤノンプロダクションプリンティングシステムズ）に転職し、会社で陸上部が発足したことで実業団登録選手としての活動を開始します。資生堂への移籍を経て、谷川真理は平凡な市民ランナーから日本女子マラソン界のトップアスリートへと着実に成長を遂げました。資生堂時代の後輩には、後にオリンピックに3大会連続出場した弘山晴美選手がいました。

主要な実績とオリンピックへの挑戦

1991年11月の東京国際女子マラソンでは、バルセロナオリンピック金メダリストとなるワレンティナ・エゴロワ選手らを終盤で逆転し、2時間31分台でマラソン初優勝を飾りました。これは1983年の佐々木七恵選手以来、8年ぶりの日本人優勝として大きな話題となりました。1992年1月には東京都民文化栄誉章を受章しています。

バルセロナオリンピック代表選考を巡っては、1992年3月の名古屋国際女子マラソンで準優勝（優勝した大江光子選手にわずか5秒差）するなど健闘しましたが、1991年世界陸上での山下佐知子選手、有森裕子選手の活躍や、1992年大阪国際女子マラソンでの小鴨由水選手、松野明美選手による日本記録更新など、谷川選手を上回る好記録が相次いだため、惜しくも補欠に留まり、本番のスタートラインに立つことは叶いませんでした。

それでも競技を続け、1993年10月の世界ハーフマラソン選手権では個人・団体ともに銀メダルを獲得。同年11月の東京国際女子マラソンでは2時間28分台で初のサブ30を達成し、日本人トップの2位に入りました。1994年のパリマラソンでは、後にアトランタオリンピック金メダリストとなるファツマ・ロバ選手らを破って優勝し、自己ベストとなる2時間27分55秒（当時日本女子歴代9位）をマークしました。

アトランタオリンピック代表入りを目指した挑戦では、選考レース前に膝の痛みが治まらず大会を欠場したり、ケガの影響で万全の体調で臨めなかった最終選考レースで振るわず、再びオリンピック代表選出は叶いませんでした。

競技継続の理由と市民ランナーへの思い

度重なるオリンピック選考の壁に阻まれましたが、谷川真理は「もしオリンピックに出場できていたら、そこで燃え尽きて走るのを辞めていたかもしれない。でも、落選後にたくさんの市民ランナーやファンから『これからも一緒に走ろうね』『走ることを辞めないで！』と励まされ、非常に感動した。オリンピックに出られなかったからこそ、今でもマラソンランナーとして走り続けることができる」と語っており、多くの市民ランナーから寄せられた声援が、彼女のその後の競技人生の支えとなったことがうかがえます。

1998年に陸連登録選手としての第一線からは退きましたが、その後も現役選手として大会に出場を続けています。2007年の第1回東京マラソンでは女子の部で準優勝。2012年の大阪マラソンが最後のフルマラソン出場となっています。所属は資生堂、良品計画を経て、現在はアミノバイタルACです。

幅広い活動

競技生活と並行して、あるいはその後、マラソンの実況解説やスポーツコメンテーターとしても活動。テレビの情報番組やバラエティ番組にも多数出演し、「マラソンランナー谷川真理」として親しまれています。

また、市民ランナーの普及・発展にも尽力しており、「谷川真理ハーフマラソン」（現・ハイテクハーフマラソン）や「谷川真理駅伝」（現・ハイテクタウン駅伝）といった人気大会を主宰。これらのイベントは地雷廃絶チャリティ大会としても行われ、多くの市民ランナーが参加しています。全国各地の市民マラソンにゲストとして招かれることも多く、長野マラソンでは自身も走りながらレポーターを務めた経験もあります。

座右の銘と著作

谷川真理の座右の銘は「忍耐は苦しいけれどもその実は甘い」。OL時代、都民マラソン優勝を目指してトレーニングしていた際に偶然目にした言葉に感銘を受け、その後の努力が優勝という「甘い実」につながったエピソードをよく語っています。

マラソン・ランニング関連の入門書やハウツー本、DVDなど、多数の著作も出版しており、自身の経験や哲学を広く伝えています。

いとこには、アテネオリンピックで男子110mハードルの日本記録を樹立した、陸上競技選手の谷川聡氏がいます。

市民ランナーとして走り始め、日本女子マラソンのトップへ駆け上がり、オリンピックには手が届かなかったものの、その後の競技継続や多岐にわたる活動を通じて、多くの人々に走る魅力や喜びを伝え続けています。

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