谷瀬の吊り橋

谷瀬の吊り橋：スリルと絶景が織りなす感動

奈良県吉野郡十津川村に位置する谷瀬の吊り橋は、その長大さとスリル満点の体験で知られる、日本でも有数の生活用鉄線吊橋です。地元では「たにぜばし」とも呼ばれ、十津川村による橋梁名は谷瀬大橋となっています。

歴史

1954年（昭和29年）に架橋されたこの吊り橋は、十津川（熊野川）を挟んで十津川村上野地と谷瀬という二つの集落を結びます。かつては日本一長い歩道吊橋として名を馳せましたが、1994年（平成6年）に竜神大吊橋が完成したことで、その座を譲りました。

吊り橋建設以前は、川を渡るたびに急な斜面を往復する必要があり、洪水時には丸木橋が流されるなど、住民の生活は困難を極めていました。そこで、谷瀬集落の人々が協力し、一戸あたり20～30万円という当時としては莫大な資金を出し合い、村の支援も得て、総工費800万円をかけてこの吊り橋を完成させたのです。当時の教員の初任給が7800円、米10キログラムが765円という時代に、住民が工費の8割を負担したという事実は、この橋に対する住民の熱い思いを物語っています。

特徴

谷瀬の吊り橋は、川面からの高さが54メートル、長さが297.7メートルあります。橋の中央部は幅約80センチメートルの板が渡されただけの構造で、足元からは遥か下の川面がよく見え、スリル満点です。風が吹くと橋が大きく揺れることもあり、訪れる人々をハラハラドキドキさせます。

安全のため、「危険につき20名以上は同時に橋に乗らないように」という注意書きが掲示されています。観光シーズンには多くの観光客が訪れるため、混雑時には監視員が配置され、上野地から谷瀬への一方通行規制が行われることもあります。一方通行規制時は、対岸から臨時有料バスで戻ることになります。

現在

かつては上野地の小学校へ通う子供たちの通学路として利用されていましたが、2010年（平成22年）に小学校が廃校となってからは、主に観光客が利用しています。2021年（令和3年）9月28日には、土木学会選奨土木遺産に認定されました。

CMへの起用

谷瀬の吊り橋は、そのユニークな景観から、様々なテレビCMにも登場しています。

酒造メーカーのCMでは、俳優の渡哲也が橋を渡るシーンが使用されました。
携帯電話会社の関西限定CMでは、俳優の赤井英和が橋の上で携帯電話で話す様子が映し出され、「（秘境）十津川村でもつながります」というキャッチコピーが用いられました。

アクセス

車：国道168号線
バス：奈良交通八木新宮線・十津川線 上野地停留所

バスの車内放送では「上野地、谷瀬の吊り橋前です」と案内されます。特急バスの場合、当停留所で20分程度の休憩時間があり、時間に余裕があれば橋を渡ることも可能ですが、バスに乗り遅れないように注意が必要です。

谷瀬の吊り橋は、スリルと絶景を同時に味わえる、十津川村を代表する観光スポットです。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してみてください。

もう一度検索