豊中市歌

豊中市歌

「豊中市歌」（とよなかしか）は、日本の大阪府豊中市が公式に定めた市民歌です。この楽曲は、歌詞を辰巳利治氏が、そして旋律を須藤五郎氏がそれぞれ手がけました。

市歌制定の契機となったのは、豊中市の市制施行10周年記念事業です。太平洋戦争終結後の復興期にあたる1946年（昭和21年）10月、記念行事の一環として、市歌にふさわしい歌詞が広く一般から公募されました。多数の応募の中から選ばれた入選作の歌詞に対し、当時宝塚歌劇団に専属し、かつ豊中市内に居住していた作曲家の須藤五郎氏が曲を付しました。こうして完成した豊中市歌は、翌1947年（昭和22年）に正式に発表され、豊中市の歌として定められました。

市歌が制定された1940年代後半は、戦後復興が進む中で、大阪府下の北摂地域や北河内地域をはじめとする多くの自治体で市歌を制定する動きが見られました。これは、新たなまちづくりの一環として、地域の象徴となる歌を持つことの意義が認識されていたためと考えられます。豊中市とほぼ同時期に市歌を制定し、今日まで歌い継がれている例として、池田市、茨木市、高槻市、守口市、枚方市といった近隣各市の市歌が挙げられます。

制定から長きにわたり、豊中市歌は様々な場面で市民に親しまれています。豊中市役所では、毎週水曜日の正午になると庁内放送で市歌が流れ、庁舎内にそのメロディーが響き渡ります。また、新成人を祝福する成人式や、憲法が保障する権利や自由を称える憲法記念日市民表彰式など、市が主催する重要な式典においては、参加者によって市歌が斉唱される伝統が続いています。

市歌の演奏・合唱に用いる楽譜に関して、かつて豊中市役所が管理していたのは、主に歌唱用の単旋律譜でした。しかし、令和元年（2019年）に、大きな進展がありました。合唱団「大阪コレギウム・ムジクム」の主宰者であり常任指揮者を務める当間修一氏より、豊中市歌をより多様な編成で演奏・合唱するための新しい編曲による楽譜と、それを収録したCDが市に寄贈されたのです。この新しい編曲は、混声合唱、弦楽合奏、ピアノ伴奏といった様々な形態に対応しています。市は、この貴重な寄贈を受け、『新編曲（令和版）』として、これらの楽譜情報を市の公式サイト上で一般公開しました。これにより、市民団体や学校、個人などが、それぞれの活動において豊中市歌を多様なスタイルで演奏・合唱することが容易になり、市歌の普及と活用が一段と推進されています。

豊中市歌は、制定された時代の背景を伝え、市の歩みを見守りながら、現在も市民の心のよりどころとして大切に歌い継がれています。

もう一度検索