豊島泰盈

豊島 泰盈（としま やすみつ）について

豊島泰盈は、江戸時代前期から中期にかけて活動した旗本で、その通称は左平七兵衛です。彼は御留守居番与力として219石余を受け持ち、豊島家は坂東八平氏の流れを汲み、伝統的な名門とされています。泰盈は日本の歴史の中で、特に家系図の編纂において重要な役割を果たしました。

生い立ちと家督相続

豊島泰盈は豊島泰利の子として生まれ、母は岩瀬正行の娘です。幼名は平二郎でした。寛文元年（1661年）、泰盈は家督を継ぎました。その後、殿中の躑躅之間で老中・松平信綱に先祖の功績を訴え、数年にわたり分知を求めました。元禄11年（1698年）に、彼の父・泰利の所領である上総国・下総国の210石が上総望陀郡他に219石余に替えられました。

家族と隠居

正徳2年（1712年）には嫡男・泰音が亡くなったため、彼は堀内六郎兵衛の三男を養子として迎え、娘を娶せました。翌年、正徳3年（1713年）には72歳で老中・久世大和守重之に隠居を願い、許可を得て家督を養子・泰朝に譲りました。泰盈は52年もの長きにわたり殿中に仕えました。

家系図の編纂

隠居後の泰盈は、歴史的な武門の名家としての自負を持ち、豊島家の家譜の作成に取り組みました。豊島氏の本宗家は146年前の文明10年（1478年）に滅び、系図や記録が失われていたため、彼の取り組みは重要な意味を持ちました。古文書を収集し、「吾妻鏡」や「鎌倉大草紙」といった史料を精読し、さらに豊島氏ゆかりの寺社を訪問して系図を作成しました。この系図は「泰盈本豊島家系図」と呼ばれ、後世に大きな影響を与えました。

同様に、金輪寺（東京都北区）にも豊島氏の系図が奉納され、これを「金輪寺本豊島家系図」として知られています。また、彼は豊島氏に関する石神井愛宕神社と石神井三宝寺の縁起も奉納しました。

戦いと追悼

泰盈は、自身の名家の歴史だけでなく、過去の人々を偲ぶことにも注力しました。江古田・沼袋原の戦いで滅びた豊島泰経（石神井城主）とその弟の豊島泰明（平塚城主）のために、享保12年（1727年）には石神井三宝寺で泰経の250回忌、平塚城官寺で泰明の250回忌を執り行っています。さらに、彼と泰音が奉納した石灯籠は現在も石神井氷川神社に残っています。

家系図の意義

泰盈が編纂した系図は、事実関係が不明瞭な点もありますが、江戸時代にはそのような側面が一般的でしたにもかかわらず、彼の仕事は豊島氏研究の基礎となっています。その意義は、系図の作成が単なる記録以上のものであることを示し、後世における歴史的な理解と評価に寄与しています。今や彼の系図は、豊島ファミリーの研究と歴史を知るための貴重な資料とされています。

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参考文献

• - 杉山博『豊嶋氏の研究』（名著出版、1974年）
• - 難波江進『豊島氏千年の憂鬱』（風早書林、2005年）ISBN 9784990264307

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