豊川海軍共済病院

豊川海軍共済病院の歴史と役割

豊川海軍共済病院（とよかわかいぐんきょうさいびょういん）は、第二次世界大戦中、愛知県豊川市に位置し、日本海軍の共済組合が運営する病院です。この病院は、海軍工廠に隣接して設立され、軍人や家族に医療を提供するために1940年12月に開院しました。病院の原点は海軍の共済組合であり、工廠に勤務する人々やその家族が主な対象でしたが、一般市民の外来患者も受け入れていました。診察料は組合員が無料で、家族は一般の半額とされていました。

設立と機能

1943年には工廠の業務拡大に伴い、病院内の設備も強化され、牛久保分院を開設しました。さらに、療養施設として浜名保養所も設置されました。また、看護婦や保健婦の養成機関も併設され、医療専門職の育成に貢献しました。このように、豊川海軍共済病院は地域医療の重要な役割を果たしていました。

空襲の影響

しかし、1945年8月7日、豊川空襲により病院は全焼し、甚大な被害を受けました。この空襲では、地元の多くの人々が犠牲になり、病院スタッフも多くの困難に直面しました。臨時の救護所が市内各所に設置され、患者の治療が行われましたが、その過程でも医療提供の重要性が際立ちました。

解散とその後

1945年9月30日、病院は公式に解散しましたが、その後も入院中の患者や職員は、元工廠の宿舎に移動し治療を続け、そこが豊川市民病院の設立へとつながっていきました。戦後すぐには、多くの医療資材が倉庫に残され、豊川市民病院の開設に役立てられることとなります。このように、豊川海軍共済病院は戦争の影響を受けながらも、地域の医療サービスの礎となったのです。

院長と医療提供体制

豊川海軍共済病院の院長は、海軍工廠の医務部長が兼務していました。初代院長は伊藤雋吉大佐で、続いて椎名三郎、福本正栄の各大佐が病院長を務めました。病院が持つ診療科目は内科、外科、眼科、歯科、耳鼻科、皮膚科、婦人科、小児科、物療科、X線科など多岐にわたり、充実した医療を提供していました。

医療施設と養成機関

病院は当初、病棟が17棟あり、最大で1,000床の病床を持っていました。また、浜名湖に保養所を設置するなど、結核患者の早期治療にも取り組んでいました。さらに、看護婦養成所や保健婦養成所も設けられ、医療人材の育成にも力を入れていました。看護婦養成所は1942年に設立され、数回にわたり募集が行われましたが、4期生の際には免状が交付されなかったという歴史があります。

豊川海軍共済病院は、その設立から解散まで、地域社会に根差した医療機関として、多くの人々に影響を与え続けました。戦時中の厳しい状況の中でも医療の重要性を訴え、治療活動を継続したその姿勢は、今も多くの人々に記憶されていることでしょう。

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