豊平館

豊平館：明治の粋を今に伝える、札幌の歴史的建造物

豊平館は、札幌市中央区の中島公園に佇む、歴史的な西洋館です。明治時代初期に開拓使によって建てられたこの建物は、高級ホテルとしての役割を担い、明治天皇をはじめとする多くの要人をもてなしてきました。その華麗な建築様式と、時代を彩る様々なエピソードは、訪れる人々を魅了し続けています。

豊平館の概要

豊平館は、1880年（明治13年）に、現在の大通に面した場所に、開拓使によって建設されました。当時としては珍しい本格的な西洋式ホテルとして誕生し、最初の宿泊客は明治天皇でした。その後は、要人の宿泊や祝賀会、各種大会の会場として利用され、札幌の発展とともに重要な役割を果たしました。第二次世界大戦中には日本軍に、戦後にはアメリカ軍に接収されるなど、激動の時代を乗り越えてきました。1958年（昭和33年）に現在の中島公園に移築され、2012年（平成24年）3月まで市営の結婚式場として利用されていました。1964年（昭和39年）には、その歴史的価値が認められ、重要文化財に指定されています。

豊平館の歴史

豊平館の設計は、開拓使工業局営繕御用掛であった安達喜幸が担当し、工事は大岡助右衛門が請け負いました。1879年（明治12年）に着工し、翌1880年（明治13年）に完成しました。当時、日本には本格的な西洋式ホテルはほとんどなく、豊平館はその先駆けとして注目されました。

明治天皇は、1881年（明治14年）に札幌行幸の際、豊平館を4日間の行在所として利用されました。この出来事は、豊平館の格式を高め、その後の利用にも大きな影響を与えました。同年11月には、旅館と料理店の経営が民間に委ねられましたが、天皇が宿泊した2階客室の使用が制限されたため、ホテルとしての経営は苦戦しました。しかし、中央の高官の宿泊や、祝賀会、式典の会場として、その役割を果たし続けました。

札幌市の発展とともに、式典や大会の需要が高まり、1921年（大正10年）に札幌市は宮内省から豊平館を譲り受けました。1926年（昭和元年）には、豊平館の裏に新たな建物を建設し、連結して公会堂として利用されました。昭和初期には、明治天皇ゆかりの場所として聖蹟とされ、1933年（昭和8年）に国の史蹟に指定されました。

第二次世界大戦中には北部軍に利用され、戦後にはアメリカ軍に接収されました。その後、三越札幌支店の代替店舗として貸与された時期もありましたが、1947年（昭和22年）に札幌市に戻り、公民館、市民会館として利用されました。1957年（昭和32年）には中島公園への移築のため解体され、翌年に復元されました。2012年（平成24年）から2016年（平成28年）にかけて保存修理工事が行われ、現在は観覧施設として、また貸室としても利用されています。

建築様式

豊平館は、アメリカ式の建築様式を基調としていますが、細部には和風のモチーフが取り入れられています。開拓使によって手がけられた洋風建築の集大成とも言える建物であり、文明開化期の建築技術の高さを今に伝えています。木造2階建てで、壁は白、その他にはウルトラマリンブルーが配色され、目を引く外観となっています。正面玄関には半円形の車寄せがあり、その上にはバルコニーが設けられています。バルコニーの上には、仏師・柳瀬昇司の手による懸魚が飾られており、洋風建築の中に和のアクセントを加えています。

アクセス

豊平館へは、札幌市営地下鉄南北線の中島公園駅から徒歩5分、または市電の中島公園通停留場から徒歩5分でアクセスできます。

観覧情報

• - 観覧時間: 9:00 - 17:00
• - 休館日: 毎月第二火曜日
• - 観覧料: 大人300円、中学生以下無料 (20名以上の団体は大人270円)

豊平館は、札幌の歴史と文化を伝える貴重な建造物です。ぜひ一度、その美しい姿を訪れてみてください。

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