豊明殿

豊明殿（ほうめいでん）

豊明殿は、皇居の明治宮殿および新宮殿に置かれた殿舎の一つであり、宮中における重要な宴会場として使用されています。

沿革

豊明殿の歴史は、明治宮殿時代に遡ります。当初から供宴や宴会の場として設けられ、戦後に再建された新宮殿においても、その役割と名称が引き継がれました。

豊明殿という名称は、宮中の伝統的な節会の一つである豊明節会（とよあかりのせちえ）に由来しています。この名称は、豊かな実りと収穫を祝う意味合いを持ち、宴の場にふさわしいものとして選ばれました。

豊明殿は、国賓を招いて行われる宮中晩餐会の主会場として使用されるほか、重要な国家的行事の際にも使用されます。1990年（平成2年）に行われた天皇の即位の礼では、国賓を招いて饗宴の儀が執り行われました。また、大嘗祭における大嘗宮の儀の後には、「大饗の儀」が催され、三権の長をはじめ、国会議員、全国都道府県の知事や議長、市町村長や議長の代表、各界の代表など、多数の招待客が招かれました。

概要

豊明殿の外観は、日本の伝統的な建築様式である和風入母屋造りを採用しており、中庭に面して南向きに建てられています。これにより、自然光がふんだんに差し込む明るい空間となっています。

豊明殿の室内面積は915平方メートルに及び、宮殿内のホールとしては最大の規模を誇ります。この広大な空間は、立食形式の場合、最大で600名ものゲストを収容することが可能です。

内装には、日本の伝統美が随所に散りばめられています。壁面には、つづれ織りによる豊幡雲（とよはたぐも）の装飾が施されています。この豊幡雲は、日本画家の中村岳陵が昭和11年の第1回帝展に出品した作品を再構成したもので、縦4メートル、横6.5メートルという壮大なスケールで空間を彩ります。

天井は、鳥取県産の杉板を使用したパネルで覆われており、32個のクリスタル・ガラス製シャンデリアが吊り下げられています。これらのシャンデリアは、光を屈折させ、室内全体に優雅な輝きをもたらします。シャンデリアの設計は、永原浄が担当しました。

床には、日本画家の杉山寧が原画を手がけた手織段通が敷き詰められています。幅7メートル、長さ37メートルの段通を3枚合わせたものが使用されており、その美しい色彩と模様が、空間に深みと風格を与えています。

建具は、東西両側が襖、南側が明かり障子となっており、日本の伝統的なデザインが取り入れられています。これらの建具は、光の調節や空間の仕切りとして機能するだけでなく、 interiorの美観を高める役割も担っています。

その他

豊明殿の北側には、配膳室が設置されており、スムーズな配膳をサポートしています。南、東、西側は廊下となっており、特に東側の廊下は中央部を広くすることで、奏楽室としての利用も可能となっています。これにより、宴の雰囲気を盛り上げる音楽の演奏にも対応できます。

なお、宮殿には、公賓を接遇するための小食堂として、豊明殿とは別に連翠（れんすい）という施設も設けられています。

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