豊橋市図書館

豊橋市図書館

豊橋市図書館は、愛知県豊橋市にある公共図書館の総称です。中央図書館、向山図書館、大清水図書館、まちなか図書館の4つの本館と、市内各地にある74の分室で構成されています。1912年の創立以来、市民の学習や情報収集の拠点として、地域の文化と発展に大きく貢献してきました。2016年度末の蔵書数は100万冊を超え、市民の多様なニーズに応えるべく、様々な資料を提供しています。

歴史

豊橋市における図書館の歴史は、1912年4月1日に愛知県から豊橋市立図書館の設置が認可されたことから始まります。以下に、その主な歩みを年表形式でまとめました。

年表

1912年（明治45年）4月1日：愛知県から豊橋市立図書館の設置が認可（創立記念日）。
1913年（大正2年）1月15日：花田町守下に豊橋市立図書館が開館。
1938年（昭和13年）5月2日：西八町に豊橋市立図書館が移転。
1967年（昭和42年）10月3日：向山大池町の豊橋市民文化会館に移転。
1983年（昭和58年）2月23日：羽根井町に豊橋市中央図書館が開館。
2015年（平成27年）4月4日：大清水町に分館として豊橋市大清水図書館が開館。配本センターは豊橋市向山図書館に改称。
2021年（令和3年）11月27日：駅前大通に分館として豊橋市まちなか図書館が開館。

花田町守下時代(1912-1938)

豊橋市は1906年に市制を施行しましたが、公立図書館の設置を求める声が高まっていました。当時、市内には私立図書館が2つありましたが、市民の期待に応えるには不十分でした。1912年、豊橋市議会で図書館建設の議案が可決され、愛知県から図書館設置の認可を得て、花田町守下にて図書館の建設が始まりました。開館は当初の予定より遅れましたが、1913年1月15日に豊橋市立図書館が開館しました。初代館長には田部井勝蔵が就任しました。開館時の蔵書数は10,142冊であり、当時としては画期的な規模でした。図書館は市制施行後に初めて設立された公共施設であり、愛知県内でも初の市立図書館でした。花田町守下時代の図書館は、洋風の平屋建てで、新聞閲覧室や読書室、児童室、喫茶室などを備えていました。

西八町時代(1938-1967)

1938年、図書館は西八町に移転しました。鉄筋コンクリート造3階建ての新館には、講堂も併設されました。しかし、戦時中は利用者数が減少しました。終戦後には、連合国軍総司令部(GHQ)の[民間情報教育局]によって外国語書籍によるCIE図書館が設置されました。1948年には市川寛が初代専任館長に就任し、児童室の再開や館外貸出の開始など、図書館サービスの拡充に尽力しました。1950年には図書館法が制定され、翌年には閲覧料が撤廃されました。1960年には自動車文庫「きぼう号」が運行を開始し、図書館サービスをより多くの市民に届けました。創立50周年を迎えた1962年には、蔵書数が9万冊を超え、手狭になっていました。

向山大池町時代(1967-1983)

1967年、図書館は向山大池町の豊橋市民文化会館に移転しました。新図書館は、開架図書室や閲覧室、視聴覚室などを備え、蔵書数は15万冊に増えました。この時期には、「ふるさとの文学めぐり」などの文化イベントも開催されました。また、貸出期間の延長や貸出冊数の増加など、利用者の利便性を考慮したサービスが提供されました。

羽根井町時代(1983-)

図書館への需要が高まる中、1983年2月23日に羽根井町に豊橋市中央図書館が開館しました。この際、名称を「豊橋市図書館」と改めています。新図書館はコンピュータを導入し、愛知県で初めて漢字システムを取り入れたことで、業務効率の向上に貢献しました。開館記念展として「豊橋近代文人展」を開催し、以後、定期的に「郷土近代文人展」を開催しています。また、市民館への配本を強化する一方で、自動車文庫サービスは廃止されました。1999年には公式ウェブサイトを開設し、2005年にはコンピュータネットワーク化を推進しました。近年では、郷土の歴史や文化に関する資料の収集・公開にも力を入れています。

各館

豊橋市図書館は、以下の4つの本館と、74の分室から構成されています。

中央図書館

羽根井町にある中央図書館は、豊橋市図書館の中核施設です。開架書架に約19万冊、閉架書架に約48万冊の蔵書を有し、幅広い分野の資料を提供しています。館内には、鈴木青々による陶壁画「楠薫」や石黒𨪙二によるモザイク壁画「大空」が飾られています。個人文庫として、羽田八幡宮文庫、司文庫、橋良文庫、瓦北文庫、安井文庫、岩瀬正雄現代詩文庫、良寛文庫、丸山薫文庫、横田文庫、神野太郎コレクションがあります。

向山図書館

向山図書館は、豊橋市民文化会館内に設置された分館です。かつては配本センターとして機能していましたが、大清水図書館の開館に伴い、向山図書館に名称が変更されました。

大清水図書館

大清水図書館は、大清水まなび交流館「ミナクル」内に設置された分館です。2015年にオープンした新しい図書館です。

まちなか図書館

まちなか図書館は、2021年11月27日にオープンした新しい分館です。駅前大通の再開発ビル「emCAMPUS」内にあり、開架式で約6万冊の蔵書を誇ります。その美しいデザインは国内外で高く評価されています。

分室

豊橋市図書館には、74の分室があります。そのうち8つのネットワーク館では、本館と同様のサービスを受けることができます。これらの分室は、地域住民の学習や情報収集をサポートしています。

個人文庫

豊橋市図書館には、以下の個人文庫があります。

羽田八幡宮文庫：国学者・羽田野敬雄が設立した文庫で、神道や国学に関する貴重な資料を所蔵しています。
司文庫：実業家・司忠が寄贈した洋書の文庫で、絵本や美術書など、幅広い分野の資料を所蔵しています。
橋良文庫：郷土史家・近藤恒次が収集した郷土史資料の文庫で、小栗風葉や菅江真澄に関する貴重な資料を所蔵しています。
瓦北文庫：郷土史家・豊田珍比古が収集した郷土史資料の文庫で、東三河の歴史に関する貴重な資料を所蔵しています。
安井文庫：医師・郷土史家である安井廣が収集した医史学関係書籍の文庫です。
岩瀬正雄現代詩文庫：詩人・岩瀬正雄が寄贈した現代詩集の文庫で、高村光太郎や萩原朔太郎の初版本など貴重な資料を所蔵しています。
良寛文庫：教育者・白井保が収集した良寛に関する資料の文庫です。
丸山薫文庫：詩人・丸山薫が遺した詩集の文庫です。
横田文庫：実業家・横田正吾が収集した菅江真澄やハンセン病対策に関する資料の文庫です。
* 神野太郎コレクション：実業家・神野太郎が寄贈したSPレコードのコレクションで、クラシック音楽を中心とした貴重な音源を所蔵しています。

まとめ

豊橋市図書館は、100年以上の歴史を持つ公共図書館です。市民の知的好奇心を満たすだけでなく、地域文化の発展にも大きく貢献してきました。今後も、市民のニーズに応じたサービスを提供し続けることが期待されます。

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