豊浜トンネル (後志)

豊浜トンネル：過去の悲劇と現在の安全

豊浜トンネルは、北海道後志管内、余市郡余市町と古平郡古平町を結ぶ国道229号線の一部です。このトンネルは、その歴史の中で大きな悲劇を経験しました。

初代トンネルから二代目トンネルへ

1963年に開通した初代豊浜隧道は、竜仙洞という自然の海食洞を通り抜ける特異な構造をしていました。しかし、この構造が危険性を孕んでいたことに加え、幅が狭く老朽化が進んだため、1984年に二代目となる豊浜トンネルが建設されました。この二代目トンネルは、豊浜隧道と隣接するチャラセナイ隧道をショートカットするものでした。

豊浜トンネル岩盤崩落事故

しかし、1996年2月10日午前8時10分頃、二代目トンネルの古平町側坑口付近で大規模な岩盤崩落事故が発生しました。高さ70m、幅50m、厚さ13m、重さ27,000トンと推定される巨大な岩盤が崩落し、トンネルの巻き出し部の天井を突き破り、走行中の路線バスと乗用車を直撃。この事故により、20名もの尊い命が失われました。

事故現場は瓦礫に塞がれ、内部の状況を確認することが困難でした。さらに、上部に残った岩盤が再崩落する危険性があったため、発破による除去作業が行われました。生存者の可能性を考慮し爆薬の量が制限されたため、岩盤除去作業は難航しましたが、4回にわたる発破作業の末、ようやく岩盤を除去することができました。

崩落の原因は、付近の地下水が凍結と融解を繰り返すことで岩盤の亀裂が徐々に成長したためと考えられています。また、1993年の北海道南西沖地震の影響も指摘されています。過去にも小規模な崩落が発生しており、安全対策の不備が指摘されましたが、刑事責任を問うことはできませんでした。

三代目トンネルと現在の豊浜トンネル

事故後、近隣に迂回路がなかったため、一時的に旧豊浜隧道を仮復旧させ、片側交互通行としました。その後、ルートの見直しが行われ、崩落現場を避ける形で山側へ迂回するバイパストンネルが建設されることになりました。このバイパストンネルは、隣接するセタカムイトンネルに接続され、2000年12月8日に三代目となる現在の豊浜トンネルとして開通しました。新しいトンネルは、セタカムイトンネルを編入し、全長2,228mとなりました。

防災祈念公園

崩落現場は海岸線から望むことはできませんが、現在の豊浜トンネルの古平側坑口脇には、防災祈念公園が整備されています。公園内には慰霊碑が設置され、事故の犠牲者を悼むことができます。また、トイレには事故概要とトンネル防災に関する展示コーナーも併設されています。

豊浜トンネルの事故は、他のトンネルの安全性を見直すきっかけとなり、建設中であった北成トンネル（現：太田トンネル）のルート変更が行われました。

豊浜トンネルは、過去の悲劇を乗り越え、安全な道路として現在も利用されています。防災祈念公園は、事故の教訓を後世に伝えるとともに、犠牲者の冥福を祈る場所となっています。

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