豚繁殖・呼吸障害症候群

豚繁殖・呼吸障害症候群（PRRS）

豚繁殖・呼吸障害症候群（PRRS）は、豚に致命的な影響を及ぼす感染症であり、主に豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス（PRRSV）によって引き起こされます。この病気は、1987年にアメリカで初めて報告され、その後カナダやヨーロッパに広がりました。日本でも、家畜伝染病予防法の下で届出の対象とされています。主に感染するのは豚とイノシシであり、そのため畜産業における重要な問題となっています。

原因

PRRSVはアルテリウイルス科アルテリウイルス属に属するウイルスで、接触感染と空気感染によって広がります。このウイルスの強い感染力は、豚やイノシシが自然宿主であることからも示されています。他の動物には感染しないのが特徴です。また、PRRSVは遺伝子変異を頻繁に起こし、その結果、異なる抗原性や病原性を持つ多様な株が存在します。このため、ワクチンを用いた感染対策は非常に難しいのが現状です。特に、強毒性の変異株も報告されており、注意が必要です。

症状

この病気の症状は、子豚と成豚で異なります。子豚の場合、慢性の間質性肺炎や発育不良が見られ、「ひね豚」と呼ばれる状態になることがあります。さらに、他の病原体との混合感染が進むと、症状がさらに悪化します。一方、成豚は咳や呼吸困難といった肺炎の症状が現れ、妊娠後期の感染では、胎子に経胎盤感染が起こり、早死産を引き起こすことがあります。これにより、死産児や虚弱な生存児が生まれることがあります。

診断

PRRSの診断には、血清や組織乳剤を用いた方法が採用され、豚のマクロファージ細胞やMARC-145細胞に接種してCPE（細胞病性変化）を観察します。また、血清学的診断においては、間接蛍光抗体法やIPMA、ELISAなどの技術が用いられます。

治療

現在、PRRSに特異的な治療法は存在せず、主に対症療法が行われます。また、繁殖障害に対する治療法が確立されていないため、感染への対処は非常に難しいです。

予防

生ワクチンが開発されていますが、その効果には限界があり、病気の蔓延を確実に防ぐことはできません。そのため、経営者は感染対策についての注意を怠らないことが重要です。

流行

2006年から2007年には、中国国内で豚繁殖・呼吸障害症候群の大規模な流行が発生しました。この頃、発生報告が全省の半数に及び、豚肉の価格が急騰するなどの経済的影響も見られました。日本においても、これに対する警戒が必要となっています。

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参考文献としては、山内亮監修の『最新家畜臨床繁殖学』や、清水悠紀臣他による『動物の感染症』、見上彪監修の『獣医感染症カラーアトラス』などが挙げられます。

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