象牙質知覚過敏症

象牙質知覚過敏症（知覚過敏）とは

象牙質知覚過敏症は、一般的に「知覚過敏」とも呼ばれ、歯の硬組織疾患の一つです。生活歯において象牙質が露出し、様々な刺激によって知覚が過敏になる状態を指します。

原因

知覚過敏の主な原因は、象牙細管という微細な管が開口し、その内部の組織液が刺激によって移動することで神経が刺激されるという「動水力学説」が広く支持されています。象牙細管の露出と組織液の移動を引き起こす要因は以下の通りです。

エナメル質の欠損: 咬耗症、摩耗症、破折、酸蝕症などによりエナメル質が物理的または化学的に損傷することで、象牙質が露出します。また、歯科治療における齲蝕歯質の除去や窩洞形成もエナメル質欠損の原因となります。
根面露出: 歯周炎の進行、不適切な歯磨き、加齢による歯肉退縮などが原因で、歯の根元部分（根面）が露出します。
間接的要因: 過労、妊娠、精神的なストレスなどが、歯髄の知覚を過敏にすることがあります。

症状

知覚過敏の典型的な症状は、冷たいものや熱いものなどの刺激によって一時的な鋭い痛みが生じることです。通常、噛むときの痛みはありませんが、原因となっている部位に触れると強い痛みを感じることがあります。

痛みの程度によって、以下のように分類されることがあります。

軽度: 軽い痛みを感じる程度
中等度: 我慢できる程度の痛み
強度: 耐えられないほどの激しい痛み

噛むときに痛みが生じる場合や、痛みが持続する場合は、歯髄炎の可能性も考慮する必要があります。また、治療中であっても、知覚過敏から歯髄炎へと移行することがあります。

診療科

知覚過敏の治療は、主に歯科で行われます。特に、保存修復学を専門とする歯科医師（歯科保存専門医）が専門的な知識を持っています。

治療法

治療の基本方針は、動水力学説に基づき、象牙質表面を覆うか、象牙細管を閉塞させることで刺激を遮断することです。

具体的な治療法としては、以下のようなものがあります。

薬物塗布: 塩化亜鉛、硝酸銀、フッ化ナトリウムなどの薬物を象牙質表面に塗布し、象牙細管を封鎖します。
イオン導入法: 亜鉛イオンやフッ素イオンを電気的に導入し、象牙細管を封鎖します。
象牙質被覆: グラスアイオノマーセメントやレジンなどを用いて、露出した象牙質を物理的に覆います。
レーザー治療: レーザーを照射して神経を鈍麻させたり、象牙質を溶解させたり、組織液を凝固させたりします。
抜髄処置: 他の治療法で症状が改善しない場合に、最終的な手段として抜髄が行われることがあります。

研究中の治療法

現在、知覚過敏に対する新たな治療法の研究・開発も進められています。

酸性のリン酸カルシウム溶液と炭酸水素ナトリウム溶液、フッ素の併用
フッ化ジアミンシリケート

関連項目

歯科
歯学／保存修復学
硬組織疾患／齲蝕
歯／象牙質／エナメル質／歯髄
歯科医師／歯科衛生士／歯科技工士
* シュミテクト

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