象限儀

四分儀（しぶんぎ、英: quadrant）は、円の四分の一、つまり扇形をした目盛り付きの測定器です。この道具にはいくつかの使用法があり、特に天体観測においては、天体の地平線からの高度を測定するために使われました。また、太陽や明るい星の子午線高度を利用して、観測者の地理的な緯度を割り出すことも可能です。さらに、観測者の緯度が既に分かっている場合には、時刻を正確に知ることもできました。このように、四分儀は天体観測用の高度計としてだけでなく、測量道具、航海用具、さらには時計としても利用された、非常に多機能な道具でした。

英語の名称「quadrant（クワドラント）」は、「円を四等分したそれぞれの扇形」を意味し、その形状が名前の由来です。日本語の「四分儀」や「象限儀」も同様の意味を持っています。

四分儀に関する初期の記録は、古代ギリシャの天文学者プトレマイオスの著書『アルマゲスト』（西暦150年頃）にまで遡ります。この書物の中で、プトレマイオスは、ペグの影を90度の目盛り付き弧に投影することで、正午の太陽の高度を測定できる道具について言及しています。これは四分儀の原型とも言えるもので、その後の四分儀の発達に大きな影響を与えました。

イスラーム世界では、四分儀は非常に盛んに使用されました。据え置き型の大型のものから、持ち運び可能な小型のものまで、さまざまなタイプが存在しました。特に携帯型の小型四分儀は中世期には広く普及し、太陽の高度を測定することで現在時刻を割り出すために用いられ、携帯型の時計としての役割も果たしました。このタイプの四分儀は「horary quadrant」（時刻四分儀）として知られています。

最も一般的なタイプの四分儀は、「quadras vetus」または「old quadrant」と呼ばれるもので、あらゆる緯度で使用できるよう設計されています。このタイプの四分儀は、測定された太陽の高度を時刻に変換する機能を持っていました。使用方法は、まず観測者の緯度と年中の日付に応じて、弦上でビーズをスライドさせます。次に、四分儀の端に固定された照準を通して太陽を観察し、ビーズが四分儀の表面に投影された時刻線と交差する位置の時刻表示を読み取ります。

他にも、特定の緯度でのみ使用するように設計された四分儀もあり、これには黄道を示す目盛りが付いていました。このタイプでは、前述の「quadras vetus」と同様に太陽を観察しますが、黄道の目印と時刻の系列が交差する位置から時刻を読み取ります。このように、四分儀には様々な種類があり、それぞれ異なる目的や使い方に対応していました。

船乗りによる四分儀の使用記録は、少なくとも1200年代にまで遡ることができ、1450年頃には船乗りの間で広く普及していました。当時の四分儀は主に木製や真鍮製でした。これらの四分儀は、航海中に緯度を測定し、正確な位置を把握するために不可欠な道具でした。

四分儀は、天文学、測量、航海など、様々な分野で重要な役割を果たした歴史的な道具であり、その精巧な構造と多機能性から、当時の人々の技術力と知恵を垣間見ることができます。

関連項目
六分儀
八分儀
* しぶんぎ座

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