豪商 稲葉本家

豪商 稲葉本家

豪商稲葉本家は、京都府京丹後市久美浜町に位置する歴史ある史跡です。この地は、江戸時代から続く豪商の拠点であり、現在は京丹後市が所有し、特定非営利活動法人「わくわくする久美浜をつくる会」が運営する展示体験施設として利用されています。稲葉家住宅とも称されるこの建物は、主屋が登録有形文化財に指定されていることでも知られています。

歴史的背景

豪商稲葉本家の歴史は、天文7年（1538年）にさかのぼります。この年に記された『丹後国御檀家帳』によると、久美浜地域には500軒以上の家屋が存在していたことが分かります。1582年、松井康之が松倉城に入城し、久美浜は城下町としてその基礎を固めました。

稲葉家は、織田信長の家臣である美濃国の稲葉一族の末裔であり、丹後国熊野郡で糀の製造業を営んで財を築きました。その後、廻船業に進出し、裕福な商家としての地位を確立しました。1871年に家業を継いだ12代目の稲葉市郎右衛門（英裕）によって、現在の建物が築かれました。この家は屋敷や土蔵、長屋門などを含む広大な敷地で構成されています。市郎右衛門は政治家としても活躍し、衆議院議員や熊野郡会議長として地域に貢献しました。

さらに、1915年には、13代目市郎右衛門（景介）が私財を投じて国鉄宮津線の開通を実現させ、地域の発展に寄与しました。その後、1950年には彼の銅像が建立され、地域住民に感謝される存在となりました。

久美浜港は「みなとオアシス」として登録されており、稲葉本家はその構成施設の一部です。2018年には「わくわくする久美浜をつくる会」が若者たちの成人式を祝うために写真撮影会を開催。庭や室内を背景に、振袖姿の女性たちが笑顔を見せる素敵な光景が広がりました。

建築様式

主屋は切妻造、桟瓦葺きの木造2階建てで、敷地面積は390平方メートルです。設計・建築を手掛けたのは地元の大工、黒崎文吉です。主屋の中心部分は、桁行6間半、梁行7間半の空間を持ち、その周囲には複数の部屋が配置されています。江戸時代には、阿波国徳島藩の蜂須賀斉昌が訪れた際に、吟松舎が建てられました。

吟松舎は平屋建てで、妻入・桟瓦葺きの伝統的な様式を持ち、東に8畳、西に6畳の間が繋いでいます。また、豪商稲葉本家の敷地内には雛御門や2棟の蔵資料館も設けられています。

利用案内

豪商稲葉本家は観光名所として多くの訪問者を迎えています。開館時間は午前9時から午後4時まで。毎週水曜日が休館日です。また、館内には2017年に地元高等学校の生徒が点訳したパンフレットが寄贈され、手に取って閲覧することができます。

この場所は歴史と文化に触れる貴重な体験を提供しており、地元の魅力を知るための重要なスポットとなっています。

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