貝賀友信

貝賀弥左衛門友信：赤穂浪士の知られざる物語

貝賀弥左衛門友信は、江戸時代前期に活躍した赤穂藩士であり、忠義を貫いた赤穂浪士四十七士の一人として知られています。慶安3年（1650年）、赤穂藩浅野家家臣の次男として生まれ、生家は吉田氏でしたが、庶子であったため、後に貝賀新兵衛の養子となりました。赤穂藩では中小姓や蔵奉行を務め、2石10両3人扶持の役職に就いていました。私生活では妾との間に一女をもうけていましたが、妻は娶っていませんでした。

元禄14年（1701年）、主君・浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ事件は、友信の運命を大きく変えました。浅野長矩の切腹と赤穂藩の改易という事態を受け、友信は家老大石良雄らと共に浅野家再興を目指し、誓紙血判による義盟にも参加しています。藩の崩壊後、友信は京都で身を潜め、浅野家お抱えの商人から資金を借り入れながら、大石良雄らと連絡を取り合い、吉良への仇討ち計画に参加しました。

仇討ち計画において、友信は重要な役割を担っていました。浅野長矩の弟・浅野長広の広島浅野宗家への永預けが決まり、浅野家再興の望みが絶たれたことを、兄から伝えられた友信は、その情報を大石良雄にいち早く報告しました。また、円山会議での仇討ち決定後には、大石良雄の命を受け、同志への血判状の返還にあたりました。この際、友信は、浅野家再興の絶望的な状況や大石の動向について同志に伝え、彼らの真意を探り、仇討ちへの参加を促したと言われています。

元禄15年（1702年）には、江戸に下向し、町人として生活しながら、吉良邸討ち入りへの準備を進めました。討ち入り当日には表門隊に所属し、門の警戒にあたる重要な役割を担いました。討ち入り後、友信は松平定直の屋敷へ預けられましたが、松平家では義士たちを罪人として厳しく扱いました。処罰も決まる前に、全員の切腹における介錯人が決められたという記録が残されています。

そして、元禄16年（1703年）2月4日、友信は松平家家臣の手によって介錯され、切腹により生涯を終えました。享年54歳でした。主君・浅野長矩と同じ高輪泉岳寺に葬られ、戒名は刃電石劔信士とされました。京都の本妙寺にも墓がありますが、これは浅野家お抱えの商人によって建てられた供養塔であり、遺骸は埋葬されていませんでした。

貝賀弥左衛門友信は、記録に残る情報が少ないため、その生涯の全貌は明らかではありません。しかし、主君への忠義を貫き、仇討ち計画に重要な役割を果たしたことは確かなようです。赤穂浪士四十七士の中でも、その存在感は比較的薄く知られていますが、彼ら全体の物語を理解する上で、友信の生涯を知ることは欠かせない要素と言えるでしょう。彼の生き様は、忠義と武士道、そして時代の激動を生き抜いた一人の人間のドラマを物語っています。彼の行動と決断は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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