松平定直

松平定直：47年にわたる伊予松山藩の治世と赤穂浪士預かり

松平定直は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した大名であり、伊予国松山藩の第4代藩主です。久松松平家宗家5代当主として、従四位下・侍従の官位にありました。

生涯と藩主就任

伊予今治藩2代藩主・松平定時の長男として生まれた定直は、幼名を鍋之助としました。延宝2年（1674年）、従兄である松山藩主・松平定長の養嗣子となり、同年、定長の死去に伴い松山藩主の座を継承します。

その後、従五位下・淡路守に任じられ、後に隠岐守に転じ、従四位下に昇進。享保5年（1720年）、江戸松山藩邸にて61歳で亡くなりました。法号は大龍院殿前四位拾遺兼隠州刺史観誉喜広聞証大居士で、遺骸は三田済海寺で荼毘に付され、遺骨は松山大林寺に葬られました。跡を継いだのは三男の定英です。

越後騒動と松平光長の預かり

天和元年（1681年）、越後騒動により改易された元越後高田藩主・松平光長が配流処分となり、松山藩が預かることになりました。光長は松山城に蟄居し、翌年には北の丸の蟄居屋敷に移転。貞享元年（1683年）末まで松山藩は光長を預かり、その後、光長は江戸に移送され、赦免されて旗本となりました。

藩政改革

定直は藩政改革にも力を注ぎました。貞享4年（1687年）には藩庁を松山城二ノ丸から三ノ丸に移転。宝永元年（1704年）、将軍家世嗣徳川家宣の官位昇進のため京都御使を命ぜられ、侍従に昇進。東山天皇にも拝謁しました。財政難の解消のため、領内では初めて藩札を発行する一方、地坪制度の導入や課税法の変更などを通じて、安定した年貢収入を実現させました。

赤穂事件と赤穂浪士の預かり

元禄15年（1703年）、赤穂事件が発生すると、定直は赤穂浪士10名の預かりを命じられました。病床にあったため、家臣を通じて命令を受け、元禄16年1月5日（1703年2月20日）に浪士たちと会見。表面上は称賛の言葉を述べましたが、実際には厳しい待遇を与えていました。

松山藩に残る記録によると、浪士たちは罪人として厳しく扱われ、厳しい護送、禁煙・禁酒・入浴禁止などの制限が課せられました。切腹の介錯人も事前に決められており、特に大石良金に対しては、介錯人から無礼な扱いを受けたという記録が残っています。切腹後、浪士たちの遺体や遺品は泉岳寺に送られました。これらの厳しい対応は当時の狂歌にも詠まれ批判されましたが、近年では赤穂市と松山市との交流もみられます。

文化への貢献

定直は俳諧をたしなみ、文化面でも貢献しました。神学者大山為起を招き、松山味酒神社の神主とし、『日本書紀』の注釈書『日本書紀味酒講記』の完成を支援しました。また、大宝寺と西林寺の修復なども行っています。

系譜と遺品

定直には正室の正心院（稲葉正往娘）や複数の側室との間に数人の子供がいましたが、長男・定仲と長女・睦、次男・鍋之助、五男・善三郎は早世しています。三男の定英が後を継ぎ、四男の定章も存命しました。養子として京極高兼の娘である恵光院もいました。定直の遺品として、茶入「北野茄子」が野村美術館に所蔵されています。

まとめ

松平定直は、47年に及ぶ藩主としての治世の中で、藩政改革、文化振興、そして赤穂浪士預かりなど、数々の重要な役割を担いました。その功績は、現在も愛媛県松山市の歴史に深く刻まれています。彼の生涯は、江戸時代中期の大名としての複雑な役割と、時代の大きな流れの中で生きた一人の人物像を示しています。

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