浅野長広

浅野長広：赤穂事件と運命を共にした旗本

浅野長広は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した旗本です。幼名は戌千代、通称は大学として知られています。一般には浅野大学の名で広く知られており、赤穂事件で有名な赤穂藩主・浅野長矩の実弟にあたります。さらに、のちに長矩の養子となるという複雑な関係も持っていました。

長広は寛文10年（1670年）、赤穂藩主・浅野長友の次男として江戸で誕生しました。母は鳥羽藩主・内藤忠政の娘で、大垣藩主・戸田氏定や岡部藩主・安部信峯は母方の従兄弟にあたります。15歳の頃には兄・長矩と共に山鹿素行に師事し、兵学などの研鑽を積みました。

元禄7年（1694年）、兄・長矩から播磨国赤穂郡の新田3000石を分与され、旗本の寄合に列しました。幕府から木挽町に屋敷を与えられ、同年に長矩の養子となり、将軍・徳川綱吉に初めて拝謁する栄に浴します。この頃、長矩の庇護の下、順風満帆な日々を送っていたと言えるでしょう。

元禄13年（1700年）には、菰野藩主・土方雄豊の養女を正室に迎えました。この婚姻は、長矩が天和3年（1683年）に勅使饗応役を務めたことと、雄豊が院使饗応役を務めていたことによる繋がりがあったと考えられています。これは、当時の政治的駆け引きや姻戚関係の重要性を示す一例と言えるでしょう。

しかし、元禄14年（1701年）、運命の歯車が大きく狂います。兄・長矩が江戸城において高家肝煎・吉良義央に刃傷に及んだのです。長矩は切腹を命じられ、長広をはじめ、広島浅野本家、従弟の戸田氏定や安部信峯らも連座しました。長矩の葬儀である泉岳寺の法要には、長広は参列しませんでした。

長矩の遺臣である大石良雄らは浅野家再興を目指して動き始めましたが、翌元禄15年（1702年）、長広は幕命により3000石の所領を召し上げられ、広島浅野宗家に預けられることとなりました。これは、兄の事件への関与を問われた結果と言えるでしょう。大石らによる吉良邸討ち入り（赤穂事件）は、それから5ヶ月後の出来事でした。預けられている間にも、宗家から1000俵の支給を受けていたという記録が残されています。

宝永6年（1709年）、将軍綱吉の死去に伴う大赦によって許され、宝永7年（1710年）には新将軍・徳川家宣に拝謁しました。安房国朝夷郡・平郡に500石の所領を与えられ、旗本として復権を果たします。さらに、浅野宗家からは300石の支給が継続され、赤穂浅野家は旗本として再興することとなりました。享保9年（1724年）、家督を嫡男の長純に譲り隠居。享保19年（1734年）、65歳で生涯を閉じました。兄や赤穂浪士と同じく、高輪泉岳寺に葬られています。

なお、長広の正室である蓮光院は、赤穂事件の後、瑤泉院の勧めで法華に帰依したため、泉岳寺には墓がありません。四谷の妙行寺に墓があり、法名は蓮光院殿妙澄日清大姉です。長広の生涯は、兄の事件、そして赤穂事件という激動の時代と深く結びついたものでした。その波乱に満ちた人生は、後世に語り継がれるべき歴史の一端を担っていると言えるでしょう。

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