貨物時刻表

JR貨物時刻表：鉄道貨物輸送の羅針盤

『貨物時刻表』は、公益社団法人鉄道貨物協会が発行する、貨物列車運行情報を網羅した専門の時刻表です。日本貨物鉄道（JR貨物）のダイヤ改正に合わせて毎年改訂され、鉄道貨物輸送の現状を詳細に伝える貴重な資料となっています。

発刊の歴史と変遷

1966年から日本国有鉄道（国鉄）貨物局が発行を開始し、1980年からは鉄道貨物協会が引き継ぎました。当初は事業者向けの資料として発行部数が5,000部と限定的でしたが、年々発行部数が増加し、2018年には2万5,000部に達しています。販売書店も増加しており、現在では全国40店舗で入手可能です。当初はISBNなどの識別コードが無く、鉄道ファンを中心に利用されていましたが、一般への認知度向上に伴い、近年では鉄道ファン以外からの購入も増加しています。

内容の詳細

『貨物時刻表』は、JR貨物が運行する全貨物列車の時刻に加え、臨海鉄道やトラック代行便の時刻なども掲載されています。2006年3月からは、三岐鉄道、西濃鉄道など一部私鉄の貨物列車時刻も掲載されています。ただし、JR貨物と接続していない鉄道事業者の路線は、路線図や時刻表の掲載はありません。例外的に、巻頭特集で紹介された例もあります。

ヤードでの貨車搬送が盛んだった時代には、主要ヤード貨車継送予定表が全体の2割を占めるなど、内容も時代に合わせて変化してきました。地域間急行貨物列車の設定時は、詳細な貨車継送図が掲載されるなど、専門的な情報も提供しています。

時刻表記載の「停車」は、「編成の解放・連結・着発線荷役作業を行うこと」を指し、機関車交換や運転士交替のみの停車は「運転上の停車」として括弧書きで表記されるなど、専門的な記述にも配慮がなされています。

また、機関車・貨車・コンテナの種類、主要貨物駅の構内配線図なども掲載されており、貨物輸送に関する多様な情報を網羅しています。

近年では、表紙写真への投稿作品採用、機関車の運用・配置情報、投稿写真コーナー、各路線ダイヤグラムなど、鉄道ファン向けの要素も充実しています。JR貨物は2009年度以降、鉄道雑誌への車両情報提供を控えていますが、『貨物時刻表』には例外的に、毎年3月時点での機関車配置表が掲載され続けています。

社会現象としての『貨物時刻表』

2004年には、テレビ朝日系列のバラエティ番組『タモリ倶楽部』で紹介されたことをきっかけに、問い合わせが殺到し、初版が完売する事態となりました。この出来事は新聞記事にも取り上げられ、「乗れない時刻表完売」という見出しで報道されました。それ以来、『貨物時刻表』は、鉄道ファンのみならず、一般の人々からも高い関心を集める存在となっています。書店では発売前から予約が殺到するなど、その人気は年々高まっています。

まとめ

『貨物時刻表』は、専門性の高い情報と、鉄道ファンを惹きつける魅力的な要素を兼ね備えた、他に類を見ない出版物です。鉄道貨物輸送の現状を知るための必須アイテムであると同時に、鉄道ファンにとってコレクターズアイテムとしての価値も高く、今後もその人気は継続すると考えられます。

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