貨車移動機

貨車移動機について

貨車移動機とは、日本国有鉄道（国鉄）が開発した、貨物の入換作業を行うための専用機械です。この機械は、駅構内の貨物側線で使用され、入換動車とも呼ばれています。1950年代前半に開発が始まり、後半に量産が開始され、国鉄の主要駅で広く使用されるようになりました。

貨車移動機の開発と背景

それまで小規模な入換作業は、人力や機関車を用いて行われていましたが、貨車移動機はこれを機械化し、効率化を図るために設計されました。現在でも日本貨物鉄道（JR貨物）で一部利用されていますが、貨物輸送のコンテナ化が進んだため、その使用台数は国鉄時代から大幅に減少しています。また、国鉄やJR以外でも、一部の企業が運用する類似の機械も「貨車移動機」として呼ばれています。

機械の構造と運用

これらの貨車移動機は、内燃機関車の形態を持ちますが、正式な鉄道車両ではなく、車籍のない「機械」として扱われています。そのため、本線での走行は行わず、必要に応じて貨車輸送やトレーラートラックでの輸送が用いられます。近年では、DE10形ディーゼル機関車のような本線走行可能な機関車も、貨車移動機として運用されることがあります。これは貨車移動機として扱うことで、検査周期を延長するメリットがあるためです。

貨車移動機は、特に駅構内の貨車の入換用に設計されており、最高速度は15-25km/h程度と低いですが、牽引力は非常に大きいです。他の動力車、特にモーターカーとは異なり、モーターカーが保線作業に特化しているのに対し、貨車移動機は入換専門です。また、モーターカーは絶縁車輪を使用しているため軌道回路に影響を与えませんが、貨車移動機は通常の車輪を使用し、軌道回路内で検知できるような設計となっています。

種類と仕様の多様性

貨車移動機はサイズや仕様において多様性があり、さまざまな形式があります。代表的なものには、5トンから20トンのカテゴリが存在し、特異な試作機も数多くあるのです。運用の変化による性能向上もあり、同じサイズであっても形式が異なることがあります。特に、雪を除去するために特別に設計された機種も存在しており、駅構内での除雪作業に利用されます。

動力源としては、開発当初は蓄電池駆動の試作機がありましたが、普及には至らず、その後はガソリンおよびディーゼルエンジンを利用する形になりました。1950年代には、機械式変速機が導入され、その後液体変速機に改良されました。また、駆動方式も連結棒からチェーン連動方式に進化しています。

1980年代には、自動運転に向けた無線操縦の試作も行われましたが、実用化には至っていません。

おわりに

貨車移動機は、鉄道貨物運送の効率を向上させる重要な役割を果たしてきました。時代の変化とともにその利用は減少していますが、今なお日本の鉄道貨物輸送の一翼を担っています。将来的には、さらなる技術革新とともに、その役割の再評価が期待されます。

もう一度検索