貴重品輸送警備

貴重品輸送警備とは、現金、有価証券、貴金属、美術品、骨董品、貴重書籍、個人情報媒体といった、価値の高い物品を輸送する際に、盗難やその他の事故から守るための警備業務です。一般的には現金輸送と呼ばれることが多いですが、警備業法においては三号業務に分類され、正式には貴重品運搬警備業務という名称で扱われます。また、警備会社によっては警送と呼ぶ場合もあります。

業務内容

この業務では、警備員が専用の輸送車（現金の場合は現金輸送車）を使用し、通常2名から4名のチームで警戒にあたります。現金の輸送ルートは多岐にわたり、例えば日本銀行から各支店への基幹輸送、支店から各金融機関への輸送、金融機関の本店から支店への輸送、さらには金融機関から企業への輸送などがあります。これらの逆ルートでの輸送も行われます。

貴重品輸送警備員の服装・装備品

警備員の服装や装備品は、業務の性質上、厳重なものが求められます。以下にその例を挙げます。

制服
制帽またはヘルメット
護身用具：警棒、特殊[[警棒]]、警杖、防刃ベスト、盾（ライオットシールド）、防刃手袋など
警笛
鍵
鍵紐：鍵束の紛失を防ぐため、肩章やベルトに繋ぐ紐。
鍵携行用箱（キーケースまたはキーバッグ）：鍵紐に付けた鍵束を入れるためのベルトポーチ
無線機
カラーボール

警戒の4原則

輸送中の警戒には、以下の4つの原則が適用されます。

1. 「止めるな」
運行中に不審者や酔っ払いなどが車両を止めようとしても、停止せずに進行を続けることが原則です。ただし、警察官と思われる人物に停止を求められた場合は、後述する対応を行います。
2. 「乗せるな」
見知らぬ人物を同乗させることは絶対に禁止されています。
3. 「離れるな」
勤務中は、警備業務用車両や運搬関係車両から離れてはなりません。
4. 「窓を開けるな」
走行中、停車中に関わらず、窓ガラスを開けることは禁止されています。これは、外部からの攻撃（催涙スプレーなど）を防ぐためです。

警察官に停車を求められた場合の措置

警察官による停止要請は、特異情報、交通検問、事件発生時の検問、あるいは速度違反などが理由で発生することがあります。しかし、過去には警察官に変装した偽者による盗犯事件（三億円事件など）が発生しているため、以下の対応が求められます。

1. 運行管理室への連絡
直ちに運行管理室の指令業務担当者に連絡し、警察機関に対して状況の確認を行います。また、到着予定時刻が遅れる可能性がある場合は、運行管理室を通じて契約先にも遅延連絡を行います。
2. 停止位置の選定
周囲の交通状況を確認し、安全で警戒を保てる位置を選定します。ただし、警察官に停止位置を指定された場合は、その指示に従います。
3. 警戒の継続
たとえ相手が本物の警察官であっても、停止理由が判明するまでは警戒を継続します。

この対応は、全国警備業協会が各都道府県の警備業協会を通じて警備業者に指導しているもので、全国で統一されています。この基本動作を怠ると、襲撃などの事故につながる危険性があります。交通違反で停車を求められた場合でも、この基本要領を遵守することが重要です。

警察官への対応の詳細

窓ガラスを開ける際は、必要最小限（数センチ程度）にとどめ、会話ができる程度に開けます。窓を大きく開けると、警察官が偽者の場合、攻撃の隙を与えることになります。
運転免許証の提示を求められた場合は、車内で提示します。
停車理由を確認し、直ちに運行管理室の指令業務担当者に連絡します。
下車を命じられた場合は、警察手帳の提示を求め、身分を確認します。その後、下車理由を聞き、運行管理室の指示を受けてから初めて下車します。

参考資料

『警備員指導教育責任者講習教本2 実務編 3号業務』 社団法人全国警備業協会/編集発行、警察庁生活安全局生活安全企画課/協力、2006年12月14日/初版発行

関連項目

警備
警備会社
警備業法
警備員
警備業務検定（＝警備員検定）
日本通運
国鉄マニ30形客車（鉄道による現金輸送）
* ショットガン・メッセンジャー - 19世紀後半から20世紀初頭のアメリカに存在した貴重品輸送を行う武装警備員

外部リンク

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