買掛金

買掛金（かいかけきん）とは

買掛金とは、企業が事業活動において、商品や原材料などを仕入れた際に発生する、将来的な支払い義務を指します。特に、購入時に即時現金決済を行わず、後日まとめて代金を支払う「掛け取引」において生じる債務です。

この種の支払い義務は、企業会計においては「仕入債務」として総称されます。仕入債務は、通常の営業取引によって発生する未払金であり、仕入先に対して負うものです。仕入債務はさらに、「支払手形」と「買掛金」に分類されます。具体的には、手形を振り出して支払いを約束した場合は支払手形となり、そうでない、つまり特別な証書を伴わずに発生する支払い義務が買掛金として区別されます。

買掛金は、商品を販売した際に代金を受け取る権利である「売掛金」と対義の関係にあります。

掛け取引の仕組み

買掛金が発生する掛け取引は、以下の段階で進行します。

1. 売買契約: 商品やサービスの購入に関する合意がなされます。
2. 納品/引渡し: 契約に基づき、商品が納品されたり、サービスが提供されたりします。この時点で、購入した側に代金を支払う義務（仕入債務、すなわち買掛金または支払手形）が発生します。
3. 請求: 仕入先から請求書が発行され、支払い期日や金額が通知されます。
4. 支払い: 支払い期日までに、購入側が代金を支払います。これにより、発生していた仕入債務（買掛金または支払手形）が消滅します。

実務における買掛金の処理

負債としての計上

企業では、商品が納品または入庫された後、まず担当部署によって商品の検収や検査が行われます。同時に、仕入先から送られてくる仕切書などの伝票に記載された単価、数量、金額が、発注内容と一致しているか確認します。これらの確認が完了した時点で、購入した商品が確定し、同時に代金を支払う義務である買掛金という負債と、仕入として費用（または棚卸資産）を会計帳簿に計上します。

紙ベースで業務を行っている企業では、発注伝票と納品書を比較し、納品数量を確認した上で、責任者が検収印を押すことによって、正式に買掛金が認識されます。一方、ERP（統合基幹業務システム）のようなシステムを利用している場合は、システム上で検収承認を行うことで、自動的に買掛金と仕入に関する会計仕訳が生成されるように設定されていることが多いです。

企業によっては、日々の仕入取引をその都度入力するのではなく、仕入先から送られてくる月次の請求書を受け取ってからまとめて処理を行う場合もあります。担当部署は、受領した請求書を支払伝票に添付し、システムに入力することで、仕入先ごとの買掛金残高が計上されていきます。その後、経理部門が、仕入先からの請求書の内容と、システムに計上された買掛金情報、そして検収情報などを照合し、納品の事実と支払うべき金額の妥当性を確認します。この確認を経て、支払い承認が行われ、実際の支払い手続きへと進みます。

支払い手続き

買掛金の支払いは、通常、仕入先の銀行口座への振込みによって行われます。多くの企業では、支払業務の効率化のため、銀行振込のプロセスを外部の専門業者（アウトソーシング）に委託しています。

支払いを行う際には、仕入先の銀行口座情報、名義、支払金額、支払日などの詳細を含むデータファイルが作成されます。このデータファイルに基づき、指定された仕入先の口座へ資金が送金されます。振込みが完了し、資金が移動した時点で、該当する買掛金債務は消滅します。

残高の確認

買掛金の正確な管理のために、主要な仕入先に対しては、定期的に買掛金の残高確認（照合）を行うことが望ましいとされています。これは、自社の買掛金残高と、仕入先が持つ売掛金残高が一致するかを確認する作業です。

残高に差異が生じやすいケースとしては、原材料の仕入れのように、キログラムあたりの単価が変動しやすい商品を取り扱っている場合などが挙げられます。定期的な照合を行うことで、誤請求や計上漏れ、単価の誤りなどを早期に発見し、トラブルを未然に防ぐことができます。

買掛金