賀名生

賀名生（あのう）：南北朝時代の南朝首都、歴史と自然が織りなす地の魅力

賀名生（あのう）は、奈良県五條市、丹生川下流の谷に位置する地域です。南北朝時代には南朝（吉野朝廷）の首都の一つとして重要な役割を果たしました。この地は、日本の歴史における激動の時代を象徴する場所であり、豊かな自然とともに、今もその名残を留めています。

名前の由来と変遷

元々「穴生」（あなふ）と書かれていたこの地名は、後村上天皇が行宮を吉野から移した際、南朝の統一を願って「叶名生」（かなう）と改められました。さらに、1351年の正平一統後、「賀名生」へと改められたという伝承があります。明治時代になり、読み方は原音に近い「あのう」に戻されました。地名の変遷は、時代の流れと人々の願いを反映しています。

南北朝時代の首都として

1336年、後醍醐天皇は京都から逃れ、一時的に穴生に滞在しました。その後、吉野山を行宮と定めましたが、1348年に楠木正行が戦死した後、南朝は足利軍の来襲を避けるため、賀名生に拠点を移しました。総福寺が当時の皇居であったと考えられています。1351年には、足利尊氏が一時的に南朝に降伏し、正平一統が実現しましたが、これは形式的なもので、本格的な統一には至りませんでした。

後村上天皇は北征軍を興し、都を伺いましたが、最終的には賀名生に戻りました。その後、天皇は河内天野山金剛寺、観心寺、摂津国住吉へと拠点を移し、1368年に住吉宮で崩御されました。長慶天皇を経て後亀山天皇が践祚し、1373年から再び賀名生を行宮としました。1392年に南朝が京都に戻り、北朝に神器を伝えるまでの約20年間、賀名生は南朝の中心地としての役割を果たしました。

近代以降の賀名生

江戸時代には、賀名生は五条藩領地、後に幕府直轄領となりました。幕末には、天誅組の吉村寅太郎がこの地を訪れ、「賀名生皇居」の扁額を書いています。明治時代以降は賀名生村となり、1959年に西吉野村に合併されました。2005年には五條市の一部となり、「賀名生」の名は通称としてのみ残りましたが、2011年に住所表記として復活しました。

賀名生梅林は南北朝時代から有名で、明治以降は実を収穫するための植林が盛んに行われました。1923年には、昭和天皇の成婚を記念して5千本の梅が植林されました。現在では柿の生産も盛んです。また、かつては五新線が通る予定でしたが、建設は中止され、用地の一部はバス専用道路に転用されました。

堀家住宅：賀名生皇居跡

吉村寅太郎が扁額を書いた賀名生の行宮跡には、従者の住まいだったとされる建物の一部が現存しています。堀信増が提供した住居であるため、「堀家住宅　賀名生皇居跡」と呼ばれ、1979年に国の重要文化財に指定されました。1998年には解体修理が行われました。この住宅は、春と秋に有料で一般公開され、予約制で見学することができました。2019年3月には改装を経て、宿泊施設、レストラン、結婚式場として新たなスタートを切っています。

賀名生の現在

賀名生は、歴史的な背景と豊かな自然が調和した魅力的な地域です。南北朝時代の史跡を巡りながら、美しい梅林や柿畑を散策することで、日本の歴史と文化を深く感じることができます。都会の喧騒を離れ、静かな時の流れの中で、心豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

アクセス

奈良交通バス五條西吉野線：賀名生農協前バス停、賀名生和田バス停、賀名生和田北口バス停
八木新宮線：賀名生和田北口バス停

関連項目

南北朝時代
吉野
日本の首都

外部リンク

堀家住宅　賀名生皇居跡（五條市）
賀名生梅林（五條市）
地域活性ポータルサイト「賀名生の里祭」

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