賀耒宏和

賀耒 宏和（かく ひろかず）は、1954年生まれの日本の造園家、そして俳人です。株式会社グリーンダイナミクスの代表取締役を務める傍ら、かつては国の機関である建設省（現国土交通省）都市局の公園緑地課で課長補佐として勤務した経歴を持ちます。また、国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究科の客員教授として、教育分野にも貢献しています。俳号は邊庭（へんてい）です。

賀耒は小倉市（現在の北九州市）に生まれました。千葉大学園芸学部造園学科で造園学を修め、さらに同大学大学院園芸学研究科の修士課程を修了しています。1979年に建設省に入省し、退官する1991年まで、公園緑地行政に深く関与しました。退官後、彼は自身の会社である株式会社グリーンダイナミクスを設立し、代表取締役に就任します。同社では、花のテーマパークや各種緑地空間など、園芸・造園に関連する事業の企画、設計監理、コンサルティングなどを手掛けています。

造園家としての賀耒は、国内におけるいくつかの重要なプロジェクトでプロデューサーを務めています。2004年に開催された国際園芸博覧会、通称「浜名湖花博」では総合プロデューサーとして、大規模な展示空間やイベント全体の企画・運営を統括しました。また、2010年に行われた平城遷都1300年記念事業においては、ランドスケーププロデューサーとして、奈良の歴史的景観に配慮した緑地整備や関連イベントの企画に貢献しました。地域における活動としては、千葉県流山市にある一茶双樹記念館の指定管理業務を、委託開始から15年間にわたり担当しました。この間の造園や緑地行政への貢献が評価され、一般社団法人日本公園緑地協会から第46回北村賞を受賞しています。現在、これらの事業の一部は後進に引き継がれています。

造園とは別に、賀耒は俳人としての活動も精力的に行っています。彼が俳句に親しむようになったのは、造園家として一茶双樹記念館に関わったことがきっかけでした。この記念館で開かれていた俳句教室を母体として誕生した句会の一つ、流山双樹句会では会長を務めています。また、大谷弘至氏が主宰する著名な俳句結社「古志」の会員でもあります。俳句を通じた日本の自然観や文化への探求は深く、特に造園や歴史と関連付けたテーマにも取り組んでいます。全国にある延喜式内社などの由緒ある神社を中心に、およそ6000社に及ぶ鎮守の杜を実際に訪ね歩き、その生態や文化的意義について調査・研究を進めています。これらの調査に基づく社寺や鎮守の杜に関する論考も多数発表しており、造園と日本の精神文化を結びつける独自の視点は注目されています。

これらの幅広い知識と経験は、2023年に八坂書房より刊行された著書『一茶繚乱 俳人 小林一茶と江戸の園芸文化』に結実しています。この本では、江戸時代の俳人小林一茶の生涯と、当時の豊かな園芸文化との関係性を詳細に論じており、造園家と俳人、両方の専門性を持つ賀耒ならではの研究成果が示されています。

賀耒宏和は、造園という専門分野で大規模プロジェクトを成功に導く一方で、俳句という芸術を通じて日本の伝統文化や自然の奥深さを探求し続ける、多才な人物と言えるでしょう。彼の活動は、現代における緑地空間のあり方や、文化と自然の共存といったテーマに新たな光を当てています。

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