資源の呪い

資源の呪いとは

資源の呪い（しげんののろい）という概念は、鉱物や石油などの非再生可能な自然資源が豊富に存在する地域において、経済成長が鈍化する現象を指します。一般的には、このような地域は資源の豊富さが逆に工業化や経済の発展を阻害することが多いとされ、時には「逆説の豊富さ」とも呼ばれます。

概要

この経済的な逆説は1980年代に注目を集め始め、特に1993年にリチャード・アウティが提唱した「資源の呪いという命題」において初めて用語化されました。アウティの研究によると、資源を豊富に持つ国々がそれをうまく経済成長の原動力として活用できていないことが指摘されています。この問題は、多くの国々に共通する傾向が見られます。特に、天然資源が豊富な国々での経済成長が、資源が少ない国に比べて困難であることが示されています。

その一例として、ジェフリー・サックスとアンドリュー・ワーナーによる研究があり、豊富な天然資源と貧弱な経済成長との関係を示しています。例えば、1965年から1998年の間におけるOPEC諸国の一人当たりのGNP成長率は年平均で1.3％の減少を見せており、対照的にその他諸国の平均成長率は2.2％でした。

経済成長が進まない原因

リチャード・アウティは、資源が豊富であっても経済成長が進まないいくつかの要因を挙げています。

1. 資源依存の影響：国が資源に依存すると、他の産業が育たず、経済の多様性が損なわれる。
2. 環境への影響：資源を確保するための過剰な開発は土地の劣化を招く。
3. 内戦と腐敗：資源を巡る内戦や政治の腐敗が経済発展の足かせとなる。
4. 資源の搾取：資源から得た富が特定の支配層に吸収される傾向がある。
5. 紛争リスクの増加：特定の輸出品がGDPに占める割合が高まると、紛争のリスクが増加するという研究結果もあります。

具体的には、輸出額の占有率が5%の国での紛争リスクは約6%ですが、これが25%になるとリスクは33%にまで上昇します。

権威主義との関連

資源の豊富さと権威主義政権がどのように結びついているかも重要な観察点です。サウジアラビアやベネズエラ、ロシアなどの国々は、オイルマネーによって国の体制を維持し、民主化の妨げになっているとの指摘があります。資源の富が権力の集中作り出し、その結果として民主的な政治環境が発展しにくくなる懸念が存在します。

資源の呪いからの脱却

しかし、このような資源の呪いから抜け出そうとする動きも見られます。たとえば、カザフスタンではソブリン・ウェルス・ファンドを設立し、資源から得た富を投資に振り向けることで、資源に依存しない経済の基盤を築こうとしています。ノルウェーやモーリタニア、イランでも、同様の試みが行われており、資源の富を持続可能な方法で利用しようとしています。

一方で、ベネズエラやナウルなどでは、依然として資源に頼りきったモノカルチャー経済からの脱却ができておらず、その克服がマクロ経済の大きな課題となっています。

このように資源の呪いは、単なる経済現象に留まらず、政治や社会の構造にも大きな影響を与える問題と言えるでしょう。資源の豊富さが必ずしもその国の発展に寄与するわけではなく、むしろ新たな挑戦をもたらすことにも成り得るのです。

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