資産管理サービス信託銀行

資産管理サービス信託銀行株式会社：歴史と統合

資産管理サービス信託銀行株式会社（以下、TCSB）は、日本の信託銀行業界において重要な役割を果たしたものの、現在は存在しない企業です。2001年の設立から2020年の吸収合併までの歴史を紐解きながら、その概要と統合に至る経緯を詳細に見ていきましょう。

設立と事業内容

TCSBは、2001年1月22日、みずほ信託銀行（当時、みずほアセット信託銀行との合併前）、朝日生命保険、第一生命保険、富国生命保険、そして安田生命保険（現在の明治安田生命保険）という、そうそうたる顔ぶれの5社が出資して設立されました。わずか1週間後の1月30日には営業を開始し、日本の金融市場においてその存在感を示し始めました。

TCSBは、主に以下の3つの事業を柱として展開しました。

マスタートラスト業務: 複数の機関投資家の資産をまとめて管理する業務。
有価証券資産の管理（カストディ）業務: 証券会社などの顧客に代わって、株式や債券などの有価証券を保管・管理する業務。
* 確定拠出年金の資産管理業務: 企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金における資産の管理業務。


これらの業務を通じて、TCSBは機関投資家や企業から高い信頼を獲得し、急速に事業規模を拡大していきました。2016年3月末時点での信託財産残高は、実に141兆865億円にのぼる規模に達していました。これは、日本の金融市場におけるTCSBの重要な地位を示すものでした。

資本構成の変化と統合

設立からしばらくの間、TCSBの主要株主は設立時の5社でしたが、2016年10月20日、第一生命保険が保有する株式を譲渡し、かんぽ生命保険が資本参加するという変化がありました。これは、金融市場における資本連携の再編を反映した出来事と言えるでしょう。

しかし、TCSBの最大の転換点は、2018年10月1日に発生しました。三井住友トラスト・ホールディングス系列の日本トラスティ・サービス信託銀行（JTSB）と持株会社方式で統合し、JTCホールディングスの子会社となったのです。これは、信託銀行業界における再編の流れの中で、大きな一歩となりました。

統合後、JTCホールディングスは、2021年をめどに持株会社と傘下の両行を合併する計画を発表していました。しかし、予定よりも早く、2020年にJTCホールディングスとともにJTSBに吸収合併され、TCSBは解散しました。そして、JTSBは日本カストディ銀行に改称し、新たなスタートを切ることになったのです。


まとめ

資産管理サービス信託銀行株式会社は、設立から統合、解散まで、短期間ながらも日本の金融市場に大きな影響を与えました。設立時の強力な資本基盤、そして成長を続ける市場環境の中で、高い成長を遂げた同社の歴史は、現代の金融業界における企業再編や統合のあり方を考える上で、重要な事例として位置付けられると言えるでしょう。 信託財産残高の規模からも、その影響力は無視できないものであったと言えます。その後の日本カストディ銀行の動向にも注目が集まるでしょう。

もう一度検索