賈徳耀

賈徳耀（か とくよう）：動乱の時代を生きた軍人・政治家

賈徳耀（1879年 - 1941年）は、中華民国初期の軍人・政治家であり、字は焜庭または昆庭といいました。彼は、激動の時代において、軍人として、また政治家として重要な役割を担いました。

初期の軍歴と台頭

賈徳耀は保定陸軍軍官学校を卒業後、日本に留学し陸軍士官学校で専門的な軍事知識を習得しました。帰国後は、北洋軍閥に属し、着実にキャリアを重ねていきます。辛亥革命後の1912年には河南護軍に配属され団長に、翌年には第7師第13旅旅長に昇進するなど、その能力を発揮し頭角を現しました。袁世凱の死後、彼は段祺瑞率いる安徽派に所属し、その勢力下でさらに地位を高めていきました。

1919年8月には、軍事教育の要である保定陸軍軍官学校の校長に任命され、後進の育成に尽力しました。これは、彼に対する軍事的な手腕への高い評価を示すものでしょう。1922年には陸軍部軍学司司長、1923年には陸軍軍学編輯局局長に就任し、軍の教育・研究体制の整備に貢献しました。

国務院総理への道と失脚

1924年10月、賈徳耀は馮玉祥による北京政変（首都革命）に参画し、後ろ盾であった段祺瑞の復権に大きく貢献しました。その功績が認められ、11月には陸軍次長、12月には陸軍総長という要職に任命されました。そして1926年2月15日、彼はついに国務院総理に任命され、軍人・政治家としての頂点を極めました。しかし、その地位は長くは続きませんでした。

1926年3月18日、北京において、日本と欧米列強が段祺瑞に対し馮玉祥の排除を要求したことに端を発する民衆と官憲の衝突事件（三・一八惨案）が発生しました。この事件の責任を問われた賈徳耀は、わずか2か月後の4月20日に国務院総理を辞任し、政界から一時的に身を引くこととなりました。

その後

下野後、彼はしばらくの間、公の場から姿を消していました。しかし、1932年6月には国民政府軍事参議院参議として復帰し、再び政治の世界に戻ってきます。1935年12月には冀察政務委員会委員、翌年には外交委員会委員となり、主任委員も務めました。日中戦争が勃発すると、彼は日本軍の占領地域に留まりましたが、親日政府への参加は拒否しました。晩年は上海に隠棲し、1941年に病没しました。享年62歳。死後、その功績を称えられ、国民政府から陸軍中将、陸軍上将の位が追贈されました。

賈徳耀は、激動の時代を生き抜き、軍人として、政治家として、中国の近代史に名を刻んだ人物です。彼の生涯は、時代の波に翻弄されながらも、自らの信念を貫き、祖国のために尽力した人物の姿を今に伝えています。

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