賈銓

賈銓（かせん）：明代の官僚、その生涯と功績

賈銓（かせん、生年不詳 - 成化3年6月8日（1467年7月8日））は、明代中期に活躍した官僚です。字は秉鈞（へいきん）といい、広平府邯鄲県（現在の河北省邯鄲市）を本貫とします。

官僚としての道のり

賈銓は永楽22年（1424年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。宣徳4年（1429年）には礼科給事中（礼部の監察官）に任じられ、その職務において、官吏たちの誤った言動を厳しく指摘し、非難しました。この頃から、彼は不正を許さない、公正な人物として頭角を現し始めます。

宣徳6年（1431年）には刑科給事中（刑部の監察官）に転じ、引き続き官僚の不正を監視する役割を担いました。宣徳10年（1435年）、英宗の即位に伴い大赦令が発布されましたが、北京の重罪囚については改めて裁かれることになりました。賈銓の進言により、この恩赦は南京にも適用されることになり、多くの囚人が救済されました。その後、賈銓は給事中の任期を満了し、大理府知府（地方長官）として赴任しました。

正統6年（1441年）、王驥（おうき）が麓川（ろくせん）の思任発（しじんぱつ）の乱を討伐した際、賈銓は軍の食糧輸送を担当し、その任務を全うしました。麓川の乱が鎮圧されると、彼は大理府知府の職務をこなしつつ、雲南左参政（雲南省の副長官）に抜擢されました。さらに、王驥の上奏により、雲南布政使司（雲南省の行政機関）の事務を統括するようになりました。正統12年（1447年）には、雲南左布政使（雲南省の副長官）に昇進し、地方行政に手腕を発揮しました。

雲南では、土司（現地の有力者）たちが歳貢として銀や貝貨を徴発し、八府の民は塩や米、宝鈔を輸送することが定められていました。しかし、景泰初年には、これらの未払いが累積し、徴収が困難な状況となっていました。賈銓は、これらの状況を鑑み、未払い分の免除を上奏し、民衆の負担を軽減しました。景泰7年（1456年）に任期満了で北京に帰還しようとしたところ、軍民から留任を求める請願が相次ぎ、再び雲南左布政使に任命されました。

中央での活躍と晩年

天順4年（1460年）、賈銓は梁楘（りょうぼく）らとともに、統治の成績が優れているとして推薦されました。吏部尚書（人事部長官）の王翺（おうこう）は、空席となっていた戸部尚書（財政部長官）の任に賈銓を推薦しようとしましたが、李賢（りけん）が「その名前は聞いたことがあるが、その人物を見たことがない」と述べたため、英宗は李賢に賈銓の視察を命じました。李賢が帰還後、賈銓の人となりを報告した結果、この人事は取りやめとなりました。その後、賈銓は右副都御史（監察官の副長官）となり、山東巡撫（山東省の長官）を務めました。

天順6年（1462年）には、河南巡撫（河南省の長官）を兼任し、二つの省の行政を同時に担当しました。山東では、連年にわたって侵入があったため、賈銓は清軍御史（軍事監察官）の召還を求め、河南では飢饉が発生したため、馬の徴収を停止するよう進言しました。いずれも民衆の生活を考慮したもので、彼の民への思いやりがうかがえます。

成化2年（1466年）、賈銓は北京に召還され、都察院（監察機関）の事務を代行しました。この頃、宦官の唐慎（とうしん）らが荊州府・襄陽府の征討から帰還した際、淮安府知府の谷淵（こくえん）を杖で殴打し、死に至らしめる事件が発生しました。賈銓は唐慎らの処罰を求め、結果、唐慎らは司礼監（宦官の最高機関）に拘置され、法司（司法機関）によって処罰されることになりました。成化3年6月辛丑（1467年7月8日）、賈銓は在官のまま亡くなりました。諡は恭靖（きょうせい）とされました。

賈銓の人物像

賈銓は、官僚として不正を許さず、民を思いやる政治を行った人物でした。各地でその手腕を発揮し、民衆の信頼を集めました。中央に召還された後も、権力に屈することなく、不正を糾弾し、民の利益を守るために尽力しました。その生涯は、明代の官僚の模範とされました。

賈銓は、明代の歴史において、その清廉潔白な姿勢と卓越した行政能力で名を残した官僚の一人として、記憶されるべき人物と言えるでしょう。

参考資料

* 『明史』巻159 列伝第47

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