賦算

賦算（ふさん）とは

賦算は、時宗の宗教的な儀式の一つであり、念仏札を配布する行為を指します。特に「南無阿弥陀仏、決定往生六十万人」と記された札のことを「念仏札」と呼ぶことがあります。賦算には、極楽往生に関する深い意味が込められています。

六十万人の解釈

「六十万人」という表現には、主に二通りの解釈があります。まず一つ目は、時宗の伝統的な教えに基づくもので、これは「一遍の偈」に見られる文言から導かれています。この偈は「六字名号一遍法　十界依正一遍体　万行離念一遍証　人中上々妙好華」という四句で構成されており、その各句の頭文字を取った結果が「六十万人」とされます。

二つ目は、『一遍聖絵』第二に見える解釈です。この文献によると、「六」は「南無阿弥陀仏」に含まれる六字の名号を指し、「十」は阿弥陀如来が悟りを開いてからの時間、すなわち十劫を示唆します。また、「万」は阿弥陀如来のあらゆる徳を意味し、「人」は、すべての衆生が安楽世界へと往生する意義を持っています。ここで重要なのは、この「六十万人」という数字が、往生できる人数を制限するものではないという点です。

賦算の由来

賦算の起源は、一遍上人が四天王寺で仏戒を受けた後、念仏の普及を目的に始めたことにあります。『一遍聖絵』の中では、一遍が「一念の信をおこして南無阿弥陀仏ととなえ、このふだをうけ給うべし」と述べ、念仏を唱えることと一念の信を持つことが札を受ける条件であると説明しています。しかし、最終的には、受け取る側の信や浄不浄を問わずに、賦算を行うべきとの神託が示され、従って無条件で配布を行うようになりました。

このような背景の中で、賦算は鎌倉時代から室町時代にかけて時宗の活動を大いに助け、発展を促進しました。

現代における賦算の実践

現在でも賦算は重要な儀式として受け継がれています。神奈川県藤沢市の清浄光寺では、毎日朝の勤行の後、また特定の日に賦算が行われています。具体的には、1月12日の初賦算、4月の春季開山忌、9月の秋季開山忌、そして11月27日に実施される別時念仏「一つ火」の法会後に遊行上人によって行われます。これらの行事は、信仰の共有や共同体の意識を育む重要な機会となっています。

賦算が現代においても根強く行われていることは、時宗の教えが未だ多くの人々に影響を与えている証左であり、今後もこの伝統的な儀式が継承されていくことが期待されます。

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