質屋蔵

質屋蔵（しちやぐら）

「質屋蔵」は古典落語の一つであり、もともとは上方落語の演目として知られています。その後、東京にも紹介されましたが、正確にいつ移入されたかは不明です。この演目は三代目桂米朝や六代目三遊亭圓生といった名人によって特に名演示されたことで有名です。

あらすじ

物語はある質屋から始まります。質屋の旦那が銭湯に行った際、三番蔵にお化けが出るという噂を耳にします。これは彼の店の信用に関わる問題であり、真相を明らかにするために番頭に調査を命じます。しかし、番頭は恐れをなしており、お化けを見たくないと抗議します。

旦那は、このお化けが質に入れられた品物の霊ではないかと考えます。その理由は、質に入れられた品物の多くが、長屋の奥様たちが日々の生活費を切り詰めて集めたへそくりで購入したものであり、その恨みが質屋に向かうのは当然だというものでした。旦那は長屋の女性が苦労して手に入れた帯を質に入れ、病に倒れた例を挙げながら、番頭にその憎しみが形を変えて現れる可能性を語ります。

番頭も気味が悪いと思っているものの、何か手を打とうと思い、助っ人を呼ぶ提案をします。推薦されたのは出入り職人の熊五郎です。彼は元気な男ですが、実は幽霊が苦手でした。旦那が小僧の定吉を使いにやると、定吉はすぐに「三番蔵のことですか？」と口を開きます。

定吉の策略

普段おしゃべりな定吉は、自分の鬱憤を晴らすチャンスだと考え、熊五郎の元へ急ぎます。途中で鼻高々に自らの欲求を満たすため、芋羊羹を要求します。熊五郎は定吉の言を真に受けて大きなものを買い与えますが、状況は混乱し、最終的に定吉は詳細を忘れて帰ってしまうのです。

熊五郎は、「お酒」や「おかず」という言葉に何かをつかまれたかのように、急いで質屋へ帰る決意をします。しかし、旦那は彼の遅刻に対してただイライラしていただけであり、熊五郎は早合点してしまいます。

熊五郎の悪行

熊五郎の過去の行動が露呈していく中、旦那は知らぬ間に彼の不正を把握していくことになります。それは居酒屋で他の従業員から貰った美味しい酒や、再利用した美味しい沢庵などの話です。旦那は全てを知らず、熊五郎はいつの間にか多くの不正を重ねていました。

お化けとの遭遇

そして、夜が更けていよいよ丑三つ時となります。熊五郎と番頭は、恐れながらも蔵の前で張り番を開始しますが、緊張からお酒に逃げようとします。そんな緊張の中、意外にもお化けが現れます。それはなんと、帯と羽織が相撲をとっているのを見て兩者とも驚愕します。この異様な光景の後、質入れされた掛け軸から菅原道真が登場し、質入れの利上げを急かします。

結末と教訓

最後に、菅原道真が自らの逆境を語る中、旦那が彼と二人を笑い飛ばす場面が展開します。これは話の裏にある教育的要素として、質流れと不正の結果を対比させる形で展開され、古典落語の深いメッセージを引き立てています。全体として「質屋蔵」は、笑えるだけでなく人間の裏側に潜む弱さや、恨みの意志を巧妙に描いた傑作となっています。

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