贖罪の奏鳴曲

書籍概要

『贖罪の奏鳴曲』は中山七里による推理小説で、御子柴礼司を主人公とするシリーズの第1作目である。この作品は著者にとって初のリーガル・サスペンスとなり、2012年にはテレビ番組『王様のブランチ』で紹介され、大森望の推薦も受けた。また、同年の『ダ・ヴィンチ』誌にて今月のプラチナ本として選ばれた。

本作は、昔から数多くの作品に登場してきたキャラクター、古手川と渡瀬のコンビが再登場し、主人公である御子柴礼司に関わる。出版元が異なるが、以前の作品『連続殺人鬼カエル男』と時系列で繋がっており、多くの人物や出来事がリンクしている。

中山七里は、「主人公の成長と謎の解明を同時に描く」というコンセプトから執筆を始め、多くの問題を作品の中に盛り込むことができた。犯罪の背後にある真正の人間ドラマを追求し、贖罪の意味や少年法への疑問、さらに障害を抱える家庭の現実についても考察している。タイトルの「贖罪の奏鳴曲」は、主人公の内面的な楽章を象徴し、ベートーヴェンの「ピアノソナタ第23番ヘ短調〈熱情〉」が重要な役割を果たす。

中山は、過去に懲役囚から寄せられた意見を通じて、犯罪者の感性が欠落していることを知り、それを音楽によって目覚めさせる場面を描くことを決意した。そして彼は、医療少年院でピアノを奏でる少女との出会いによってその表現を具現化した。編集者からの意見に対しても、演奏シーンの長さにこだわり、物語のリアリティを損なわないよう努力した。

あらすじ

物語は入間川の堤防で発見された全裸の男性の遺体から始まる。彼は30代前半のフリー記者、加賀谷竜次であり、遺体には多くの傷が見受けられた。埼玉県警の渡瀬と古手川はこの事件を捜査し、加賀谷が関与していたスキャンダルを追う過程で、彼が過去に起こした幼女殺害事件にも関わっていたことが明らかになる。

御子柴礼司は、東條美津子の国選弁護人となり、彼女が夫の人工呼吸器を故意に止めたとされる事件の真相を追求することに。一方で、加賀谷の死因に関する調査が進むにつれ、さまざまな証拠や証言が浮かび上がり、事件は複雑な様相を呈していく。御子柴は地裁で加賀谷の事件と東條の事件をつなぐ鍵となる証拠を突き止め、その法廷で衝撃的なデモンストレーションを行う。

その後、真相が明らかになる中、御子柴は思いがけない襲撃に遭い、物語はさらに深い闇に引き込まれていく。

登場人物

• - 御子柴礼司: 本作の主人公であり、優れた弁護士。自らの過去を隠し、様々な案件を手がける。
• - 古手川和也: 渡瀬の部下で若手刑事。主人公の複雑な境遇を理解し、強力なサポート役を務める。
• - 渡瀬: 捜査一課の刑事であり、部下である古手川と共に事件の真相に迫る。作品を通しての知略家でもある。
• - 東條美津子: 夫の保険金殺人事件の被告人で、御子柴が国選弁護人として引き受けた案件。
• - 加賀谷竜次: 発見された遺体の持ち主であり、過去にさまざまなスキャンダルと関わった男。

書籍情報

• - 出版社: 講談社
• - 初版刊行日: 2011年12月21日
• - ISBN: 978-4-06-217377-3

この作品は、個々の人物が抱える悩みや社会問題に対する鋭い視線を持った作品であり、単なるミステリーにとどまらず、深いメッセージを内包した作品である。

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