赤い城

デリーの赤い城 (ラール・キラー) の歴史と魅力

赤い城、またはラール・キラーとして知られるこの城塞は、インドの首都デリーに位置し、ムガル帝国の壮大な歴史を今に伝える重要な建造物です。赤砂岩で築かれたその城壁は、壮麗な美しさを誇り、訪れる人々を魅了します。この城は、ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンによって、自身の名を冠した新都シャージャハーナーバードの居城として建設されました。1639年から9年という歳月をかけて1648年に完成し、その後の歴史において重要な役割を担ってきました。

ムガル帝国の栄華を今に伝える

赤い城は、単なる城塞としてだけでなく、ムガル帝国の政治、文化の中心地としての役割も担っていました。その建築様式は、当時のイスラム建築の粋を集めたもので、赤砂岩の荘厳な外観と、精巧な装飾が特徴です。城内には、皇帝の謁見に使われたディワーニ・アーム（一般謁見殿）や、貴賓を迎え入れるディワーニ・カース（貴賓謁見殿）などの重要な建造物が残されています。また、皇帝アウラングゼーブによって建てられた真珠モスク（モーティー・マスジド）は、白大理石で美しく造られており、その優雅な姿は見る人を魅了します。

歴史の変遷と現在の姿

赤い城は、1857年のインド大反乱の際にはイギリス軍によって接収され、兵舎が建設されるなど、その姿は大きく変えられました。しかし、インド独立後も長らく軍事施設として使用され、近年まで一般公開されていませんでした。現在は、主要部分が観光客に公開されており、その歴史的価値と美しい建築を間近に見ることができます。ただし、デリー門周辺と北西部には現在も軍の施設があり、立ち入ることはできません。

城内の見どころ

赤い城には、見どころがたくさんあります。

ラホール門: 西側にある正門で、城内から見てラホールの方向にあるため、このように呼ばれています。
デリー門: 南側の門で、城内に勤める人々が出入りしていました。
チャッタ・チョウク: ラホール門とつながるアーケードで、かつては市場として使われ、現在は土産物屋が並んでいます。かつては宮廷の女性たちのためのショッピング街であったと言われています。
ナッカル・カーナ: 時刻や王族の帰還を知らせる音楽が奏でられた中門。現在は戦争記念博物館となっています。
ディワーニ・アーム: 一般謁見殿。皇帝が一般の人々と会見した場所です。
ディワーニ・カース: 貴賓謁見殿。皇帝が貴賓や高官を迎え入れた場所です。
* モーティー・マスジド: 真珠モスク。皇帝アウラングゼーブによって建てられた白大理石のモスクです。

世界遺産としての価値

2007年には、隣接するサリームガル城とともに「赤い城の建造物群」としてユネスコの世界遺産に登録されました。この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

1. ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
2. 現存する、または消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
3. 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するものであること。

赤い城は、これらの基準を満たすだけでなく、インドの歴史と文化を象徴する重要な遺産です。毎年8月15日のインド独立記念日には、首相がここで演説を行うなど、インド国民にとって特別な場所となっています。

赤い城は、その壮麗な建築、豊かな歴史、そしてインドの独立を象徴する場所として、訪れるすべての人々にとって忘れられない場所となるでしょう。

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