赤い指

赤い指

『赤い指』は、2006年に登場した東野圭吾の推理小説で、加賀恭一郎シリーズの第7作です。本作は、著者が「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞してから初めての書き下ろし長編として発表されました。

概要

本作は、練馬署の刑事として活躍する加賀恭一郎が主人公です。シリーズの中で加賀が描かれる最後の作品であり、加賀の従弟にあたる松宮脩平や看護師の金森登紀子といった、以降のシリーズで登場するキャラクターが新たに登場しています。物語は、加賀家の確執や、息子の犯罪を隠蔽しようとする家族の姿を描き、加賀親子の複雑な関係性が浮き彫りにされます。著者自身も、本作を通じて加賀のキャラクターに変化が生じたと述べており、物語の核となるテーマは家族の絆や闇に関する深い考察でした。

この小説の原案は、1999年12月号の『小説現代』に短編として発表されたことに始まります。当初は短編集に収める予定でしたが、東野は長編に書き直したいと考え、6年の構想期間を経て完成しました。彼によれば、この6年間は様々な家庭の問題について考える時間であったと言います。ついに2010年にドラマ化されると、原作のストーリーに基づき、設定や登場人物たちの関係性をより深く探る内容となりました。

あらすじ

前原昭夫は、普通の家庭を持つサラリーマンですが、彼の家庭は一見平穏ながらも内に抱える問題が山積みです。妻・八重子との関係は冷え切っており、息子・直巳は特異な性格を持ち、母親の政恵は認知症を患っています。後ろめたい日常を送る昭夫の暮らしに、ある日訪れた出来事が全てを変えてしまいます。直巳が無邪気な幼女を殺害し、その遺体が自宅の庭に放置されているのを発見した昭夫は、衝動的にそれを隠そうとしますが、家族の崩壊へと導く元凶となってしまいます。

練馬署では、この事件を追うために加賀と松宮が捜査を開始します。彼らもまた、加賀の父親が病に倒れ、親子の確執を抱えているという複雑な事情を持ちながら、事件を解決へと導きます。調査の中で彼らは次第に前原家の隠された真実に迫りますが、昭夫は恐れからさらに追い詰められていきます。

登場人物

• - 加賀恭一郎: 練馬署刑事であり、事件解決に奮闘する主人公。
• - 松宮脩平: 加賀の従弟で、捜査一課刑事。
• - 前原昭夫: 事件の核心を握るサラリーマンの父親。
• - 前原八重子: 昭夫の妻で、実母との不和が家庭に影を落とす。
• - 前原直巳: 昭夫と八重子の息子で、事件の直接的な加害者。

物語が展開する中で、登場人物たちの心理描写が丹念に描かれ、彼らの人間性や家庭の複雑な関係が浮かび上がります。

書籍の成功と受賞歴

『赤い指』は、発表当初から多くの読者に受け入れられ、2006年の週刊文春ミステリーベスト10では4位、2007年版『このミステリーがすごい！』では9位を記録しました。また、文庫版は2009年にオリコンランキングで発売初週から首位を獲得し、ミリオンセラーを達成しました。

この作品に感情を揺さぶられた読者や評論家が多い中、加賀というキャラクターがどのように成長し、変化していくのかが注目されています。結局、家族を追求することで得られるものは何か、深い問いかけを残した本作は、読者に豊かな感慨を与え続けているのです。

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