赤土国

赤土国について

赤土国（せきどこく）は、7世紀初頭に東南アジアに存在したとされる仏教王国です。この国についての記録は、中国の史書『隋書』の南蛮伝や『北史』の四夷伝に見られます。また、赤土国は扶南国とは異なる国であると考えられています。

国の位置と特徴

赤土国は南海の中に位置し、中国から船で約100日かかるという距離にありました。国名の由来は、土壌が赤褐色を持っていたことから名付けられました。周囲には波羅剌国、婆羅娑国、訶羅旦国といった他の国々が存在し、北側には広い海が広がっていました。国土は数千里四方にわたり、広大な領域を誇っていたとされています。

王と政治体制

赤土国の王は瞿曇（ガウタマ）氏に属し、その名は利富多塞とされます。王の父が出家し、王位を利富多塞に継承する形で、彼は在位したのは16年間でした。王には3人の妻が存在し、いずれも隣国の王族でした。

王は僧祇城を居城としており、城の門は三重の構造で、それぞれ100歩程度の間隔を置いて位置していました。門には飛仙、仙人、菩薩の像が装飾されていました。その国の官僚制度には、政事を扱う薩陀迦や陀拏達叉、さらに刑法を担当する倶羅末帝が存在しました。各城には那邪迦と呼ばれる者が1人、鉢帝が10人おり、地域の治安や行政を管理していました。

国民の風俗

赤土国の人々は一般的な風俗として、耳に穴を空け、髪をざんばらに切っていました。また、香油を体に塗る風習があったことが記録されています。仏教を重んじつつ、バラモンの教えも大切にした社会でありました。女性は髪をうなじの後ろで結い上げ、男女ともに朝霞や朝雲の色合いの布を服装として用いたとされています。

葬儀については、貴族から庶民まで同様のやり方で行われ、遺体は竹木で作った棚に置かれ、焼香しながら霊を送ったといいます。ただし、国王については遺灰が金瓶に収められ、特別な廟屋に納められていました。

自然環境と農業

赤土国は、健康的な常温の気候と、多くの雨が降る特徴がありました。特に稲、クロキビ、白豆、黒麻などが盛んに栽培されていました。また、サトウキビを使用した酒作りも行われ、ナスの根を混ぜて独特の風味を持つ酒が製造され、その味と香りが評価されていました。さらに、ヤシの果実からも酒を醸造していました。

煬帝の時代

隋の煬帝が即位した際、遠方の国への使者を募集しました。607年1月、屯田主事の常駿と虞部主事の王君政が赤土国の使者として志願し、南海郡から舟で出発しました。彼らは赤土国に入国し、その王宮において煬帝からの詔を伝える役目を果たしました。

610年春、常駿は赤土国の王子を伴って隋に帰国し、帝と直接会うこととなります。その際、赤土国に関する記録『赤土国記』も編纂されましたが、残念ながら現在はその記録は失われています。このように、赤土国は歴史に名を刻み、興味深い文化を有していた国家だったのです。

もう一度検索