煬帝

煬帝：大運河と滅亡の皇帝

煬帝（ようだい）は、中国隋の第2代皇帝（在位：604年-618年）です。569年に誕生し、楊堅（文帝）と独孤伽羅を両親に持ちました。 本来の読み方は「ようてい」ですが、慣例として「ようだい」と読まれ、これは暴君としてのイメージを強調していると考えられています。

即位までの道のり

煬帝は文帝の次男として生まれました。文帝は北周の有力者の子孫であり、政治的な地位を築き上げていました。煬帝の母、独孤伽羅は強い貞節観念を持つ女性でした。文帝は、独孤伽羅の強い影響を受けて、側室を持たない一夫一妻の生活を送っていました。

隋が建国されると、煬帝は13歳で晋王に封じられます。その後、陳の征服において重要な役割を果たしました。しかし、これは高熲という重臣が実質的に指揮をとったとされています。

煬帝は、兄である楊勇（廃太子）から皇太子の座を奪うべく、巧妙な策略を巡らせました。楊勇は妾を寵愛するなど、独孤皇后の不興を買っており、文帝も次第に楊勇を疎んじていました。一方、煬帝は正妻以外に女性を近づけず、質素な生活を装っていました。しかしこれは偽装であり、実際には秘密裏に妾を囲い、文帝が訪れる時だけ豪華な調度品を飾るという策略を弄していました。

文帝は600年に楊勇を廃し、煬帝を皇太子に立てました。そして604年、文帝が崩御すると、煬帝が帝位を継ぎました。文帝の死因については、病死説と煬帝による弑逆説の両方が存在します。『隋書』では病死とされていますが、『隋書』後妃伝には、煬帝が文帝の寵姫に関係を持ち、激怒した文帝が煬帝を廃嫡しようとしたため、煬帝側が先手を打って文帝を監禁、弑逆したとされています。この弑逆説の方が後世に広く受け入れられています。

即位後、煬帝は廃太子楊勇を殺害させ、反乱を起こした弟の漢王楊諒を鎮圧しました。他の兄弟もまた、煬帝の策略により不幸な最期を遂げました。文帝が望んだ兄弟間の睦まじい関係とは程遠い現実でした。

皇帝としての政策

煬帝の最大の功績として挙げられるのは、大運河の開削です。これは、長安と洛陽、そして江南を結ぶ巨大な運河で、煬帝は莫大な人力を動員してこの事業を推進しました。この運河の開削には、莫大な費用と労力が費やされ、民衆に大きな負担がかかりました。運河沿道には、多くの離宮が建設され、煬帝の贅沢な生活を象徴しています。

大運河以外にも、煬帝は洛陽城の拡張や長城の修築など、多くの土木工事を推進しました。これらの事業は、隋の経済を圧迫し、民衆の生活を苦しめることになったのです。

外征と高句麗遠征

煬帝は積極的な対外政策を展開し、突厥、吐谷渾、倭国などとの外交や軍事行動を行いました。西域諸国との交易も盛んになり、煬帝は洛陽で大規模な見本市を開催し、中国の豊かさを誇示しました。しかし、これは表向きの繁栄であり、現実には隋は内政の混乱が深まっていました。

煬帝の積極的な外交・軍事政策の中で、最も大きな失敗となったのが高句麗遠征です。煬帝は三度にわたって高句麗に遠征軍を送りましたが、いずれも大きな損害を被り、隋の衰退を加速させる結果となりました。高句麗遠征は、隋の滅亡の大きな要因の一つでした。

隋の滅亡

高句麗遠征の失敗と、過度な土木工事や奢侈な生活によって、民衆の不満は頂点に達しました。これに、楊玄感の反乱などが加わり、隋は内乱状態に陥ります。

煬帝は江都に逃亡しましたが、クーデターによって殺害されました。隋は滅亡し、煬帝の残虐な統治は終焉を迎えました。

評価

煬帝は、暴君として中国史に名を残しています。大規模事業や高句麗遠征は、隋の滅亡を招いたと非難されています。しかし、近年は再評価も進められており、時代背景や煬帝の人物像を多角的に理解する試みがなされています。

煬帝の墓

2013年、江蘇省揚州市で発見された古代遺跡が、煬帝の墓であると発表されました。

詩人としての側面

煬帝は、政治家としての失敗とは別に、優れた詩人としても知られています。多くの詩作を残しており、その中には、自らの運命を予感させるような作品もあります。

煬帝は、中国史において重要な人物であり、その生涯と治世は、様々な角度から研究され続けています。

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